さらに、トップクラスの知人たちの分析はもっと鋭い。「日本の外交筋が何をやっても駄目ですよ。中国と日本が仲良くなるのは簡単です。中国が米国との関係を改善すれば、自動的に日中関係は良くなりますよ」とか、「中国はわざと日本との距離を取っているのが日本人にはわかりませんか? いずれアメリカとの関係が修復されれば、日本とも良くなりますから心配しないで下さい」などといわれると、ついつい納得してしまう。こと経済面はさておき、中国エリートは政治面では、深い読みをしているのだ。
彼らにとっては、日本のネトウヨなどの動向は物笑いの種だ。「どこの国でも無知な人々はいますね」と一刀両断である。このように、オモテの情報(建前)とウラの情報分析(本音)を分けて理解しないと、中国の考えている日本人観はなかなかわからない。
中華思想に起因する?領土への反応
では、中国のインテリやエリートだったら、日本側の立場も理解して考えてくれるかというと、実はそうでもない。やはり、領土問題になると、共産党の意見にほぼ全員が同意するのが、最近の中国人民の傾向だ。一方で、尖閣諸島について盲目的か、というとそうではない。日本人はこの問題を安易に考えがちだが、彼らは日本人よりはるかに真剣に深く分析して考えている。彼らにとっては、尖閣だけでなく、南沙諸島でもチベット問題でもウイグル問題でも、同じなのだ。
こうした領土への反応は、伝統的な「中華思想」に起因しているのではないか。ではなぜ中国人が国境や階級を超えて、中華思想を持つのかを、私なりにもう少し深掘りして見たい。
中華思想は以前からあったわけだが、それが高まったのは孫文(孫中山)のころから、といわれる。すなわち、満州族の支配に対して、辛亥革命のスローガンの一つである「驱除鞑虏,恢复中华」(満州族を駆遂し、漢民族による国家を取り戻す)といったことから、本格的に形成されたと考えられる。
もともと、古来、元(モンゴル)も清(満族)も中国(中原)を侵略した異民族であったが、徐々に漢民族の伝統や文化に同化していった。毛沢東の八路軍が共産革命を成功させたあとには、ソ連との交渉を通じ、チベット地域も新疆ウイグル自治区も、いったんは中華人民共和国の領土として認識されるようになった。
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