販売開始から15年、梅酒を取り巻く環境がゆっくりと変わっていきました。都市部へ人口が集中し、核家族化が進みます。家庭で梅酒の作り手だったお祖母ちゃんは別居するのが一般的になりました。手間暇かけて作るより買ったほうが早い、といった消費者意識の変化もあります。1980年ごろから売り上げが伸び始めました。
テレビCMも継続して提供し、梅酒を日本の食卓に届ける努力を続けました。
「テレビCMなどの広告には特に力を入れています。この効果を人で出そうと思えば大変な人数が必要です。私どものような100人そこそこの会社では、CMは『千人力』です」と金銅社長。確かに梅酒は、CMが効果的な商品で、店頭で「CMで見た」として購入する顧客も多いと思います。「ただ値付けが重要です。値引きはしないことが大前提です」とも付け加えられました。
一方で、梅酒の飲み方として「食前酒(アペリティフ)」も提案、日本の食文化に新しい風を吹き込みました。時代の変化や広告宣伝も相まって、一時、同社の販売シェアは国内梅酒シェアの大半を占めたと言います。
苛烈な価格競争に
ただ、こんなおいしい市場、他社が放っておくはずがありません。20年前は30社ほどしかなかった梅酒メーカーは、酒蔵や大手メーカーなどの参入で300社を超えるまでに急増。苛烈な価格競争に巻き込まれます。
同社は昔からの製造法を守り、原材料は梅、糖類、酒類の天然素材のみを使用しています。ところが大容量で低価格の他社製品の中には、酸味料のクエン酸を中心に香料、着色料、そして梅のエキスを少しだけ混ぜたものもあります。本来の梅酒だと原価の7割強が梅ですが、その梅を使わないのだから、いくらでも安く製造できます。気がつけばシェアも往時の3分の1程度にまで落ち込んでいました。
まずは業界として、一定の規格を定める運動を展開しました。和歌山県などの後押しもあって、2015年1月、酒類の業界団体の1つである「日本洋酒酒造組合」が、梅と糖類、酒類だけを原材料とする梅酒を「本格梅酒」と定めてくれました。和歌山県の分析では、酸味料などを加えた梅酒と比べ、「本格梅酒」はポリフェノールやカリウムを多く含む傾向があるとのことです。チョーヤ梅酒の強味は、その製品の9割以上がこの「本格梅酒」に該当することです。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら