チョーヤが目指す「オンリーワン戦略」の凄み 「梅酒という言葉を忘れさせたい」

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この品質の明確化に加え、並行してチョーヤのよさをもっと伝えていく努力も続けました。創業100周年を2年後に控えた2012年9月から、ブランド再構築の作業が開始されたのです。

チョーヤらしさとは何か。突き詰めればそれは、チョーヤにしかない100年という伝統だ、ということに行き着きました。それを製造工程に落とし込めば、「梅の質」「梅の量」そして「熟成」と「ブレンド技術」ということになります。

チョーヤでは、農家の人々とともに土作りから取り組んだ高品質の紀州産南高梅を中心に100%国産の梅だけを、高さ8m、直径3~4mの貯蔵タンクに漬け込みます。その期間は長いもので18年に及び、梅の品種、酒の種類もさまざまです。つまり、じっくり「熟成」させた個性の違う梅酒が、約450基のタンクに眠っているわけです。

創業100周年の思いを込めた「The CHOYA」

このタンクごとのデータを分析し、専門家が最適の「ブレンド」を模索します。目指したのは、従来の梅酒が不得手だった「食事に合う梅酒」でした。社内の要求水準が高く、何度も調合を繰り返しますが、満足のいく結果が出ません。結局、当初の完成期限だった100周年の2014年には間に合いませんでした。

こだわり抜いた「The Choya」(写真:チョーヤ)

それでも研究陣は、本当にチョーヤらしい梅酒を求めてさらに努力を続け、ついに2016年3月に「コレだ!」というブランドを生み出します。手間を惜しまず最低3種類以上の原酒をブレンド。熟成期間1年もの、3年ものを用意し「本格梅酒 The CHOYA」として売り出しました。海外への輸出も意識し、ボトルも洋酒感を取り入れた和モダン調に仕上げました。1年熟成ものは口の中に深みのある南高梅の香りが広がり、3年熟成ものはブランデーのようなまろやかな酸味が特徴です。

この新ブランドは、従来、梅酒にあまり関心のなかった若年層にも支持され、会社として大いに手応えを感じました。また「本格梅酒The CHOOYA AGED 3 YEARS」は2016年に、梅酒として世界で初めて、国際的な酒類品評会「インターナショナル・スピリッツ・チャレンジ(ISC)」で金賞受賞の栄誉に輝きました。

熟成3年ものの希望小売価格は2500円(720ml、税抜き)、また熟成1年ものは1000円(同)。発売以来好評で、1年目は予算比200%を達成しました。この新ブランドの貢献もあって、現在のチョーヤの売り上げシェアも順調に回復しています。

新ブランドは海外からも注目を集め、現地代理店の期待も大いに高まっているそうです。そこで昨年後半から香港を皮切りに、台湾、シンガポールでのテレビCMをスタートさせました。「The CHOYA」商品は、この勢いで今年も1.5倍増を見込んでいます。

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