「水素の輸入」がエネルギー安全保障の秘策だ 海外で製造したCO2フリー水素を日本に運ぶ

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有機ケミカルハイドライド法には課題もある。水素化反応は発熱反応、脱水素反応は吸熱反応だが、これらの反応の際に出入りする熱で、水素エネルギーの約3割を費消してしまうことだ。

千代田化工建設では、水素化プラントおよび脱水素プラントの効率向上と、出入りする熱の有効活用を図り、サイクル全体のエネルギー効率を高めることで、将来の実用段階で経済性を高めたい考えだ。

国際水素サプライチェーンの構築に向けて

昨年末に開催された第2回再生可能エネルギー・水素等関係閣僚会議で決定した「水素基本戦略」では、「2030年までに国際水素サプライチェーンを構築する」「2030年の水素価格は30円/N㎥、さらに将来的には20円/N㎥(水素発電の発電コストがLNG火力と同程度となるレベル)を目指す」ことがうたわれている。

2つの実証プロジェクトは、この目標に向けた大きな第一歩だ。

海外の未利用エネルギーを原料とすれば、水素の製造コストを低く抑えることができる。日本に運ぶ海上輸送コストを加えても、国内で生産する水素より低廉となる可能性が高い。

ホスト国にとっても、経済価値の低い未利用エネルギーを水素に変えて輸出することができ、また、水素製造工場や荷役業務などで雇用も創出され、経済的メリットは大きい。日本とホスト国はWin-Winの関係だ。

未利用エネルギーは、世界の広い地域に、豊富に存在している。世界の多くの国から、大量かつ安定的に水素を調達すれば、限られた地域から化石燃料を調達している現状と比べ、エネルギー安全保障面でも大幅に改善する。これが、「水素社会」をわが国が国策として推進する理由の1つでもある。

大規模水素サプライチェーン構築を目指す、2つの実証プロジェクトから目が離せない。

西脇 文男 武蔵野大学客員教授

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にしわき ふみお / Fumio Nishiwaki

環境エコノミスト。東京大学経済学部卒業。日本興業銀行取締役、興銀リース副社長、DOWAホールディングス常勤監査役を歴任。2013年9月より武蔵野大学客員教授。著書に『再生可能エネルギーがわかる』『レアメタル・レアアースがわかる』(ともに日経文庫)などがあるほか、訳書に『Fedウォッチング――米国金融政策の読み方』(デビッド・M・ジョーンズ著、日本経済新聞社)がある。

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