「水素の輸入」がエネルギー安全保障の秘策だ

海外で製造したCO2フリー水素を日本に運ぶ

水素製造過程で発生するCO2は、前回(「CO2削減の切り札!『地中封じ込め』とは何か」)紹介したCCS(二酸化炭素回収・貯留)を使って、近海の古い天然ガス田に圧入・貯留するので、ここで製造される水素はCO2フリー水素となる。

プロジェクトは、オーストラリア政府とビクトリア州政府の全面的な協力の下に進められており、CCSについても、オーストラリア政府がすでに具体的な検討に入っている。

日本側の受け入れ体制は、神戸市の沖合に浮かぶ空港島に液化水素の荷揚げ設備・貯蔵設備を建設する計画で、これには上記3社に加えシェルジャパンも参加する。

2020年からCO2フリー水素の海上輸送の実証を開始し、2030年に商用化を目指す。商用段階では、大型運搬船2隻を就航させ、FCV300万台分(または100万kW水素発電燃料相当分)の水素を日本に供給する計画だ。水素コスト(CIFベース)はロードマップの目標である30円/N㎥を目指す。

有機ケミカルハイドライド法によるサプライチェーン

動き出したもう1つのプロジェクトは、千代田化工建設が、三菱商事、三井物産、日本郵船と共同で進める「有機ケミカルハイドライド法」による水素サプライチェーン実証プロジェクトだ。

有機ケミカルハイドライド法とは、トルエンなどの芳香族化合物に水素を付加(水素化)して、別の化合物(メチルシクロヘキサン、MCH)に変えて輸送し、利用先で脱水素反応を行って水素を取り出す化学的な輸送・貯蔵方法だ。

水素を取り出した後のトルエンは、製造場所に送り返して何度でも繰り返し利用できる。MCHの体積は元の水素の500分の1で、液体水素に比べれば少しかさ張るが、トルエンもMCHも常温で液体なので、極低温に冷却する必要がなく、タンカーも貯蔵タンクも既存のインフラを活用できるのが最大のメリットだ。

このプロジェクトは、東南アジアのブルネイで、三菱商事が出資するBrunei LNG社の運営する天然ガス液化プラントで発生するプロセスガスを利用し、水蒸気改質で水素を製造。これを現地に建設中の水素化プラントでMCHに変換して日本に輸送する。川崎臨海部に脱水素プラントを建設し、取り出した水素は同じく川崎臨海部にある東亜石油のガスタービン発電の燃料とする。

2020年から実際に水素の輸送を開始し、実証段階では最大FCV4万台分(210トン/年)の水素を供給する計画だ。

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