10万台の車が「下水から作った水素」で走る日 福岡市や富士市で実証事業が始まった
下水処理場はCO2フリー水素の宝庫
下水汚泥や家畜の糞尿など、廃棄物系バイオマスを発酵させて生ずるバイオガス(主成分はメタンガスと炭酸ガス)からメタンガスを精製。そのメタンガスから水素を製造することができる。
バイオガスの精製および水素製造の過程でCO2が出るが、もともと大気中にあったCO2を動植物が吸収したものなので、大気中のCO2濃度は増えない(カーボンニュートラル)。バイオマス由来の水素は「CO2フリー」なのだ。
なかでも、都市型バイオマス集積所ともいえる下水処理場で発生するバイオガスを原料とした水素製造が注目されている。
下水処理残渣(ざんさ)である「下水汚泥」を発酵させてバイオガスを作る技術は実用化されており、バイオガスは発電、都市ガス原料、天然ガス自動車などに利用されている。
国土交通省によると、全国の下水処理場約2200カ所のうち、汚泥発酵設備を持つ処理場は約300カ所ある。ここで発生するバイオガスの2割強が未利用のまま焼却処分されている。
この未利用ガスを活用することで、年間1億㎥相当(燃料電池車10万台分)の水素を製造できるという。
福岡市では、下水汚泥から水素を製造してFCV(燃料電池車)に供給する世界初の実証事業が、同市中部水処理センターを舞台に実施された。
三菱化工機・福岡市・九州大学・豊田通商の4者共同研究体は、国土交通省の下水道革新的技術実証事業(B-DASHプロジェクト)として2014年度から実証を開始した。
1日に3300㎥(FCV65台をフル充填できる量)の水素を製造し、2015年には処理場敷地に水素ステーションを開設している。
三菱化工機によれば、現状は事業採算性に課題があるが、約4年間の実証結果により、技術的にはすでに確立できたと考えており、今後はビジネス化を視野に入れ取り組んでいく段階だという。
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