プーチン発言騒動に見る脆弱すぎる日本外交 百戦錬磨のプーチンの論理は一貫している
先日、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領がウラジオストクで開かれた「東方経済フォーラム」で、安倍晋三首相や中国の習近平国家主席らを前に突然、前提条件なしでの日ロ平和条約の年内締結を提案し、日本政府をあわてさせている。
大勢の聴衆の前での発言だったが、安倍首相は何の反論もしなかった。そればかりか後日、首相をはじめ日本側の閣僚はこの発言を「平和条約締結の意欲を示したもの」(安倍首相)などと、足並みをそろえて都合のいい解釈をして、波風が立たないよう努めている。
プーチン氏の発言の狙いが北方領土問題の棚上げなのか、あるいは経済協力など日本の対応に対する不満の表れなのか、明確なことは何もわからない。しかし、この発言の前後も読めば、日本が歓迎できるような意図がないことだけは明らかだ。そして、今回の騒動に関連する2人の首脳のこれまでの言動から、冷徹な外交に徹する百戦錬磨のプーチン氏と、失敗を恐れて言うべきことを言わない安倍首相との外交手法の違いが浮き彫りになった。
フォーラムでプーチン氏は平和条約以外にも言及した。司会者の質問に答えてまず、日本との平和条約は締結したいが「米国のミサイル防衛を含めたこの地域の軍事協力関係の多くの面を懸念せざるをえない。これらすべてが我々の交渉の議題だ」と述べた。地上配備型ミサイル迎撃システムの「イージス・アショア」の日本への配備など、北朝鮮のミサイルを意識したミサイル防衛システムの拡充を進める日米の動きを牽制し、日米同盟についても日ロ間で取り上げる意思を表明したのだ。
さらにプーチン氏は1956年の日ソ共同宣言について、両国の議会批准後、「日本側が履行を拒否した。われわれは今、この問題の検討に立ち戻った」と述べた。
プーチン大統領は「日本が態度を変えた」と批判
共同宣言は北方領土問題について「ソビエト連邦は日本国の要請にこたえ、かつ日本国の利益を考慮して、歯舞諸島及び色丹島を日本国に引き渡すことに同意する。ただし、これらの諸島は、日本国とソ連との間の平和条約が締結された後に現実に引き渡されるものとする」と記している。
共同宣言合意後、日本政府は4島一括返還を要求し続けている。プーチン氏の「日本側が履行を拒否」という発言は、歯舞諸島と色丹島の引き渡しで合意した共同宣言の内容と4島一括返還という日本の主張との違いを取り上げて、共同宣言の内容を実行できないのは日本が態度を変えたからだというのだ。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら