「ペルソナ5」のゲーム性に映る人生の広がり そこに海外RPGとは異なる自由度がある

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敵は倒すほかにも、交渉次第では主人公の「ペルソナ」となり、共に戦ってくれる。このように敵と交渉してペルソナとして仲間に。さらにペルソナ同士を合体させて、より強力なペルソナに作り変えていくのは、このシリーズの楽しいお約束である。

ゲームは大きく3つのパートに分けられる。1つ目は先ほど解説した、怪盗団として特定個人を改心させるために挑むパレス攻略。2つ目は主人公が高校生として日常生活を営むパート。そして最後に、大衆が持つ小さな認知の歪みが、より集まって生まれた自動生成ダンジョンであるメメントス攻略である。

ペルソナ5がうまくできているのは、この3つをうまく組み合わせることで「高校生であること」と、「能力を用いてストーリーを進める」ことを見事に同居できることだ。高校生が主人公といっても、単に年齢が高校生くらいという設定なだけで、いっさい高校生活が関係ないようなゲームも少なくない中で、ストーリーだけではなくシステムにまで高校生活を入れ込んでいるのは見事だ。

それは逆に言えば主人公が「高校生活を送らざるをえない」ということでもある。システム面では他にやりたいことがあっても期末試験や修学旅行などの学校特有のイベントが割り込んできて行動が制限されるし、またストーリー面では、主人公は「暴行事件を起こして転校してきた異物」としてほかの生徒や教師の白い目につねにさらされ続けることになる。

仲間との深い絆がゲームを進めていく

また、メインストーリーがパレス攻略だとすれば、日常生活パートは主人公とかかわっていく仲間たちのサブストーリーが展開される。

主人公1人だけでパレスの攻略はままならない。日常生活パートを通して、仲間はもちろん、いろいろな人たちと交流して、絆を深めていこう。

仲間との絆が深まれば、相手をダウンさせたあとの再行動時に、味方に行動順番を譲ったり、混乱などの状態になったときに自動的に回復してくれたりするようになる。一緒に戦わない人たちも、絆を深めることによって、その人が扱うアイテムを安く買うことができるようになったり、戦闘中に使える特別な技能を教えてもらえたりする。

そうした交流も主人公の人間としての魅力があってこそである。交流ばかりではなく、勉強をしたり、映画を見たり、アルバイトに励んだり、ハンバーガーを食べたり、メイドカフェに行ったり(?)など、さまざまな経験を積んで人間としてのパラメーターを上げていかなければ、深い絆は結べない。

そして、メメントスはパレスを形成するほどではないが、人々の小さな認知の歪みが寄り集まって生まれたダンジョンだ。ゲーム的にはサブイベントとして小さな悪事を働く人たちを改心させたり、攻略後にはパレスが消えてしまったりするので、それまでのパレスにいた敵ペルソナを取得するためのダンジョンとなる。東京の地下深くを走り続ける地下鉄をモチーフとしたメメントスの最深部には、いったい何が隠されているのだろうか?

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