ソニーが20年ぶりの最高益をたたき出し、勢いを盛り返している。その中でひときわ異彩を放つのが、同社音楽事業傘下のアニメ制作会社・アニプレックスなどが展開するRPG型のスマートフォンゲーム「Fate/Grand Order(フェイト・グランドオーダー、以下FGO)」である。
2017年度のソニーの連結決算では、同アプリの躍進でスマホゲームが400億円近い営業利益を稼ぎ出した。累計ダウンロード数は、配信3年目で国内1400万(8月時点)を突破。北米や中国など海外でも大人気で、1人当たりの課金額の高さも世界のスマホゲームの中で随一だ(米調査会社アップ・アニー調べ)。
FGOのストーリーは、プレーヤーが人類滅亡の未来を阻止するために過去へ戻り、歴史上の人物が扮する「英霊」をサーヴァント(使い魔)として戦いながら、「聖杯探索」(グランドオーダー)の旅に出る、というもの。作家陣が描き下ろした100万字を超える物語が展開される。ビジネスモデルは、プレーヤーが好みの英霊を“ガチャ”(ゲーム内で用いるアイテムを購入する仕組み)で当てるのに必要な「聖晶石」と呼ばれる道具を手に入れる際に課金を求める形だ。
土台となったのは、ゲームブランド「TYPE-MOON」(有限会社ノーツが運営)が2004年に発売した成人向けパソコンゲーム「Fate/stay night(フェイト・ステイナイト)」。熱狂的なファンに支えられ、これまでもゲームやアニメ、小説など無数のシリーズ展開がなされてきたが、今回のヒットは異例の規模だ。その立役者の1人が、FGOの企画・開発・運営を担当するゲーム制作会社、ディライトワークスの庄司顕仁社長。大ヒットゲームはいかにして生まれたのか。庄司社長に聞いた。
FGOの魅力はシナリオにある
――配信開始から3年経った今でも、「FGO」の人気が続いています。ツイッター上でも世の中の大事件や芸能ネタなどをしのいで、FGOのキャラクターが頻繁に話題になっていますね。
ここまでの人気が出たことに対しては、当然驚いている。ただ、このゲームを作った目的はそもそも、魅力的でありながらコアなファンからの支持にとどまっていたFateというIP(知的財産)を、より多くの人の手に取ってもらえるようにすること。そういう意味では、もくろみどおりだったともいえる。
――Fateが支持されている要因は何なのでしょうか。
原作者の奈須きのこ氏が描くシナリオにある。私はこの仕事に携わることになって初めて、Fateシリーズのゲームやアニメなどに本格的に触れたが、シナリオの圧倒的な魅力とキャラクター設定の細かさに圧倒された。
イギリスの伝説上の人物、アーサー王をモチーフとした「アルトリア」というメインキャラクターを例に取ると、創作上の人物にもかかわらず、彼女がどのような人生を送り、どのような葛藤を抱いているのかがよくわかり、本当に生きているかのように感じる。直感的に、ミリオンヒットは狙えるくらいのコンテンツパワーを持っていると思った。だが、売れたといわれる代表作のPCゲーム「Fate/stay night」で40万本。持っている力と実績との差異に、大きな違和感を抱いていた。
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