ソニーの半導体「手薄だった」車を攻める事情 スマホで鍛えた「目」で自動運転の分野に参戦
「2020年代におけるソニーの社会貢献の柱は、自動運転の安全性の領域だ。(自動運転に用いる)車載センシングにも適したCMOS(シーモス)イメージセンサーには、今後3年間で最も大きな設備投資と研究開発費をかける」
6月19日、株主総会に臨んだソニーの吉田憲一郎社長は、いつになく力強い口調でこう宣言した。
6月25日発売の『週刊東洋経済』は、「ビッグデータ、EVシフトで需要爆発 怒涛の半導体&電池」を特集。データ流通量の爆発的拡大で市場が大きく伸びる半導体と、車載用を中心に需要が増えているリチウムイオン電池の2業界をクローズアップしている。
カギを握るCMOSイメージセンサー
ソニーは今、これまであまり展開してこなかった自動車の領域でアクセルを踏もうとしている。カギを握るのが、ソニーが世界に誇るCMOSイメージセンサー(相補性金属酸化膜半導体を用いた固体撮像素子、以下CMOS)だ。
イメージセンサーとは、電子機器の「目」に当たる部品だ。レンズから取り込んだ光を電気信号に変換し、デジタルカメラやスマートフォンのカメラなどの核となる。現在の用途はスマホ向けが大半だが、今後は産業用機器や防犯カメラ、ADAS(先進運転支援システム)、そして自動運転車などの車載向けなどの用途拡大に伴い、2021年には現在の約4割増の159億ドル(約1兆7000億円)に膨らむとの予測もある(米調査会社ICインサイツ)。
このCMOS市場におけるソニーのシェアは、直近の2017年度に金額ベースで5割超を占め、2位のサムスンを引き離す。特に強いのは高価格帯のスマホ向けで、米アップルが採用していることに加え、中国ファーウェイ、オッポなどがこぞってソニー製を採用していると言われる。CMOSが8割を占めるソニーの半導体は、2017年度通期でソニー全体における営業利益の2割を稼ぐ、中核事業だ。
技術的にも、他社より4~5年先行していると言われる。強さの源泉は、アナログ技術にある。センサーに詳しいIHSマークイットの李根秀氏はこう分析する。
「ソニーが他社に先行して実用化した3層構造のCMOSセンサーでも、各層を貼り合わるアナログな技術がものを言う。競合への人材流出もあるとは聞くが、容易にまねできるものではない」。社内のリソースも、最優先で割かれている。2018年度から3年間の中期経営計画では、設備投資1兆円のうち、最大金額をCMOS向けに使う計画だ。
だが、懸念はある。現在、ソニーのCMOSは大半がスマホ向け。スマホの年間出荷台数は15億台弱と市場のパイが大きい一方で、市場の成熟が進んでいる。足元では、1台のスマホに複数のカメラが搭載される複眼化がトレンドだが、消費者にどこまで受け入れられるかは未知数だ。
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