ソニーの半導体「手薄だった」車を攻める事情 スマホで鍛えた「目」で自動運転の分野に参戦
ただ、車載向けCMOS市場の5割超は、米オン・セミコンダクターが占めており、ソニーのシェアは1割を切る状況。車載カメラに詳しいテクノ・システム・リサーチの駒田隆彦氏には、「自動車向けの採用は、過去の実績で決まるため、新規参入は簡単ではない」と見る。
後発のソニーに勝ち目はあるのか。
今後の試金石となるのが、12月に量産出荷が予定されるADAS用センシングカメラ向けのCMOS、「IMX324」だ。同製品は汎用製品だが、モービルアイが中国NIOや米フォードなどに供給しているADAS関連製品と接続することが可能で、「モービルアイと企画段階から深く協業してきた」(車載事業を担当する春田勉・副事業部長)。2021年ごろの量産となるモービルアイの次世代モデルにも対応し、ここで同社にCMOSを供給しているオンセミコンダクターと米オムニビジョンのパイを奪えるかが焦点になる。
一度採用されれば4~5年続き、単価も高い
車載向けセンサーのうまみは大きい。スマホ向けと異なり、一度採用されたら4~5年は採用が続くうえ、販売単価もケタ1つ違う。さらに、各社が開発熱をあげる自動運転分野ゆえに「言い値で買ってもらえる状態が続いている」(前出の李氏)。
一方で、特有の難しさもある。1つが家庭用機器とは段違いの品質が要求される点だ。たとえば、温度耐性なら、摂氏マイナス40度から125度まで気温が変動しても、正常に動く品質が要求されるのだ。
こうした品質基準をクリアするための試験にコストがかさみ「単価が高くても、利益率はスマホ向けとそう変わらないのが現状」(前出の春田氏)。さらに、自動車向けビジネスをあまり展開していないソニーにとって、完成車メーカーを頂点とする独自の商流を開拓するのも簡単ではない。「収益化は、自動運転が収益化する2020年代を見込む」(前出の春田氏)と息の長いチャレンジになりそうだ。
沸騰する自動運転市場に飛び込むソニー。5月末にはタクシー会社とともにAIを活用した配車アプリの会社を設立し、走行データの収集にも乗り出した。「完成車を作るかどうかは未定」(吉田社長)とのことだが、将来的に半導体チップの提供にとどまらない展開もありうる。ソニーが、自動運転時代に欠かせないメーカーとなれるかどうかの試練が始まっている。
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