カシオ「デジカメ撤退」を決めたとどめの一撃 中国の看板製品もスマホに客を奪われた
「カシオがコンパクトデジカメから撤退する」――。ネット上には昔の製品を懐かしむ声などさまざまな反応が沸き上がった。
5月9日、カシオ計算機は消費者向けコンパクトデジタルカメラ事業から撤退すると発表した。同日に発表した2018年3月期決算は、売上高3147億円(前期比2%減)、営業利益295億円(前期比3.5%減)だった。足を引っ張ったのがカメラ事業で、売上高123億円(同34%減)、撤退費用が重なり営業赤字が49億円まで大きく膨らんだ。事業縮小の深刻さを鑑み、2017年度下期に撤退が決まった。
高性能カメラを搭載したスマートフォンが普及した昨今、わざわざコンパクトデジカメを持ち歩く人は激減。市場も急速に縮小している。コンパクトデジカメを中心とする「レンズ一体型デジタルカメラ」の出荷台数はピークの2008年には世界で1億1000万台に達し、カシオのカメラ事業売上高も当時約1300億円まで伸びた。だが2017年は1330万台まで落ち込んだ(カメラ映像機器工業会調べ)。
なぜ撤退が「今」だったのか
カシオは市場の縮小速度がコンパクトデジカメより遅い一眼レフカメラや、横ばいを保つミラーレスカメラを製品群に持っていない。コンパクトデジカメの需要減少は以前から進んでいたにもかかわらず、なぜ2017年度まで事業を存続できたのか。
その答えは、中国にある。カシオが手掛けるカメラの2017年度出荷台数は55万台だった。そのうち半数が一般的なコンパクトデジタルカメラで、残りの半分が「TR」シリーズという、いわゆる”自撮り”用のカメラだ。これまで撤退にまで至っていなかったのは、中国で自撮りカメラが売れていたからだ。
2011年に発売した「EXILIM(エクシリム) EX-TR100」は現地の芸能人がブログで紹介したことをきっかけに、中国で人気が爆発。「自拍神器(自撮り神器)」と呼ばれるまでになった。こうして、コンパクトデジカメの赤字をTRの黒字が埋める形が続いていた。
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