カシオ「デジカメ撤退」を決めたとどめの一撃 中国の看板製品もスマホに客を奪われた

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だが、ここにもスマホの波が押し寄せた。中国の現地メーカーがデュアルカメラを搭載するなどして、スマホのカメラ性能を著しく向上させてきたのだ。樫尾和宏社長は「(TRシリーズは)4~5年前はスマホに対して差別化ができていたが、ここ1~2年で差が大きく縮まった」と話す。

2016年度はカメラ事業が売上高185億円で5億円の営業赤字を計上したが、熊本地震の影響も含んでいたため「撤退するほどではなかった」(樫尾社長)。だが、先述のように2017年度は赤字が50億円近くまで膨らみ、中国のスマホに白旗を上げたのである。

コンパクトデジカメの歴史が終焉へ

カシオの撤退によって、コンパクトデジカメの1つの歴史が終わる。同社は1995年、業界で初めて液晶画面を搭載したデジカメ「QV-10」を発売し、「写真を撮ってすぐに確認できる」という新しさから大ブームとなった。

1995年に発売されたコンパクトデジカメ「QV-10」は、業界初の液晶搭載モデルとなった(写真:カシオ計算機)

2002年には小型化にこだわったコンパクトデジカメ「エクシリム」を投入するなど、新しいコンセプトの製品を発売してきた。イメージセンサーなどの基幹部品を内製していないカシオは、コンセプトでの差別化を狙ってきた。

消費者向けのデジカメ市場からは撤退することになるが、カメラ事業で培った画像認識技術などを活かしBtoBでの展開は続ける。すでにTRシリーズの「美顔」機能を中国のスマホにライセンス提供しているほか、皮膚がんの診断システムといった医療分野への応用事例もある。

樫尾社長はデジカメを「増収増益が見込めない唯一の事業」と表現する一方、「QV10やエクシリムを超える新たな事業領域を提案する」と強気の姿勢も見せる。画像分野で縁の下の力持ちに転身できるか。近年なかなか新規事業を育成できていないカシオにとっては、平坦な道のりではない。

遠山 綾乃 東洋経済 記者

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とおやま あやの / Ayano Toyama

東京外国語大学フランス語専攻卒。在学中に仏ボルドー政治学院へ留学。精密機器、電子部品、医療機器、コンビニ、外食業界を経て、ベアリングなど機械業界を担当。趣味はミュージカル観劇。

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