ソニーの半導体「手薄だった」車を攻める事情 スマホで鍛えた「目」で自動運転の分野に参戦

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最大顧客のアップルにも不穏な動きがある。2017年、同社はイメージセンサー技術を開発するベンチャー、米InVisage(インビザージュ)を買収。同社のセンサー技術は、現行のCMOSと比べ、明暗差を出す、動くものを撮影した際にひずみが少ないなどの技術で優位性がある。小型化も可能なため、現在のスマホにおける背面のカメラ部分のでっぱりを抑える点で、ソニーには脅威だ。

アップルは同年、初代アイフォンからGPU(画像処理装置)を供給してきた英企業からの調達を停止して独自開発に切り替えている。イメージセンサーに関しても、複数の専門家が「内製化しようと考えていても、驚きはない」と見る。

そこで、スマホの次にソニーが狙うのが、次世代車の開発に向けて盛り上がる自動車市場というわけだ。人間の運転を補助するADAS(先進運転支援システム)や、車自らが外部環境を認知する自動運転において、安全性のキモとなるのが、カメラを使ったセンシング技術。遠方の標識や暗がりでの障害物などを、いかに正確に検知できるかが勝負どころになる。ソニーは、2016年から車載向けの専業部署を新設し、開発を進めてきた。

レクサス「LS」がソニーのCMOSを搭載

すでにソニーのCMOSが搭載されている車がある。トヨタ自動車の高級車ブランド、レクサスの最上級セダン「LS」だ。ここに車載用画像センサーを供給する自動車部品大手のデンソーがソニーのCMOSを採用したことで、今後はトヨタの複数車種に採用が拡大する見通しだ。

2017年にソニーは独ボッシュとも車載カメラシステムの共同開発を発表。ほかにも、日産、韓国ヒュンダイ(現代自動車)といった完成車メーカー、自動運転システムで双璧をなす半導体メーカー、米インテル傘下のモービルアイ、米エヌビディアとも協業していることを明かしている。

自動運転車には欠かせないセンシングカメラ(写真は今年1月のCESで展示された米インテルのコンセプトカー、記者撮影)

今後の勝敗を分けるのが、モービルアイとエヌビディアの両社にどこまで食い込めるかだ。ソニーのCMOSが自動車の「目」であるならば、両社の開発する半導体は、車の「頭脳」にあたり、自動運転をめぐる覇権争いはこの両社を中心に進んでいるといって過言ではない。

現在、モービルアイはゼネラル・モーターズ、BMW、フォルクスワーゲン、日産と、一方のエヌビディアは、トヨタ、テスラ、ボルボなどと提携関係にある。

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