ソニー好調支えるスマホゲーム「FGO」の威力 開発責任者が語る、大ヒットRPG成功の舞台裏
――2013年にスクウェア・エニックスグループの役員を辞め、独立しています。その後はどのような経緯でFGOの企画・開発を行うことになったのでしょうか。
きっかけは、スクエニ時代の知人の紹介でFateの原作を手掛けるゲームブランド「TYPE-MOON」から相談を受けたことだ。当時30代の終わりに差し掛かっていた私は、「一度、スクエニという大看板を外して、裸一貫で挑戦してみたい」と一念発起。有休消化期間の数カ月を使って、1人で”武者修行“の準備をしていた。
だが、独立してもすぐ仕事が来るわけではない。できる限り何でもやってみようと、前職の縁を頼ってさまざま事を請け負っていた。そんなときに舞い込んだのが、「アニプレックスと進めている新しいスマホゲームの企画があるが、どうもピンと来ない。詳しい人の意見が聞きたい」というTYPE-MOONからの依頼だった。
奈須氏はそもそもスマホを持っておらず、ピンと来ないのはスマホになじみがないからなのか、それとも内容が原因なのかわからないとのことだった。私はスクエニ傘下のタイトーでスマホゲームを展開する事業の責任者を務めた経験があり、そこそこの知識はあった。そこで一度話を聞きに行くことにした。
原作者も説得し、まったく新しい物語に
――当初はどんな企画だったのでしょう?
RPGゲームである今のFGOと大きく異なり、当時流行していたカードゲーム形式だった。内容自体は悪くなく、配信したらおそらく一定の結果は出せていただろう。ただ、それに原作者がピンと来ないというのは、作りたいものと異なるのでは、と思った。
そこで一度、企画を白紙に戻すことにした。スマホゲームを作るという“縛り”すら取り払い、アニプレックス、TYPE-MOONと3者で「Fateの魅力とは何か」「Fateのファンが面白いと思うことは何か」ということについて、3〜4時間の打ち合わせを何度も繰り返しながら掘り下げていった。
当初そこまでリソースを割くつもりはなかったという奈須氏も説得した。「stay night」から派生したゲームではなく、FGOという新しい原作を作ろうという結論に達した。そこからコンセプトを作り込んでいったので、実際に開発に着手したのは、(最初に依頼を受けてから)半年も経ってからのことだ。
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