ソニーが「音楽著作権」に大金をつぎ込む理由 吉田新社長肝いりのビジネスモデルの全容
「業績が復活したのはいい。だが今後何を屋台骨にしていきたいのか、いまいち伝わってこない」
市場関係者や投資家などによる、最近のソニーへのもっぱらの評価だ。これに対し同社の吉田憲一郎社長は5月22日、中期3カ年計画発表の場である方向性を示した。
「利益成長よりもリカーリング(継続的に利益を得るビジネスモデル)比率を高めることで、安定的に稼げる体質の強化に重点を置きたい」。社長就任後初めてメディアの前に姿を見せた吉田氏は、今後3年の重点目標をこうまとめた。
“金庫番出身”の社長らしい堅実な戦略
「第三次中期経営計画」と名付けた新戦略は、平井一夫前社長時代に自身もCFO(最高財務責任者)などとして参画した第一・第二次中期計画の続きという位置づけだが、短期的な成果を追うのではなく、長期視点で稼ぐ力を向上させることを強調した。2017年度に達成した20年ぶりの最高益更新を受けてアクセルを踏むかと思いきや、元・金庫番らしい堅実な戦略といえる。
戦略の柱は3つある。第1に、かつてソニーの看板商品だったテレビやカメラは「ブランデッド・ハードウェア」と位置づけ、規模を追わずに採算を高めてキャッシュ創出の源泉とする。2つ目はソニーが強みとする画像センサーへの投資。この領域には中計全体の設備投資額1兆円のうち多くをつぎ込み、自動運転用途などのセンシング分野でも世界一を目指す。
そして今回ことさら強調されたのが、3つ目の柱であるコンテンツIP(知的財産)の強化だ。売り切り型から継続的に稼げるモデルへの転換に欠かせない。戦略転換の象徴として中計と同時に発表されたのが、英国の音楽出版社、EMIミュージック・パブリッシングの買収だ。
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