ソニーが「音楽著作権」に大金をつぎ込む理由 吉田新社長肝いりのビジネスモデルの全容

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実際、2017年度の音楽事業におけるストリーミング売上高は、前期比4割増の1974億円まで拡大。事業全体の2割超を占めるまでになった。「ストリーミング配信で安定した収益を得るには、楽曲ラインナップの充実が第一。そのアセット(資産)を、保有する著作権の拡大やアーティストの新規開拓でどこまで増やせるかが重要だ」(吉田社長)。

こうしたストリーミング配信から得られるデータは、著作権を保有するアーティストのプロモーションなどでも活用できる。「アプリ上でどのアーティストの曲が何度スキップされたのか、といったデータを取り、それに応じて広告宣伝費を決めることも可能だ」(同)。

音楽だけじゃないコンテンツビジネス

重視するコンテンツは音楽だけではない。映像、アニメ、ゲームの領域でも掘り起こしにどん欲な姿勢を見せる。

快進撃を続けているのが、音楽事業傘下のアニメ会社・アニプレックスが展開するスマホゲーム「Fate/Grand Order(フェイト・グランドオーダー)」だ。配信が始まったのは2015年と3年も前だが、歴史上の偉人などをモデルとしたキャラクターや重厚なシナリオが好評を博し、いまだにスマホアプリのランキングではトップ10圏内にとどまる。国内でのダウンロード数は1200万(2月末時点)に上り、中国や北米でも人気だ。2017年はこのゲームだけで、音楽事業の営業利益の3割超にあたる約400億円を稼いだ。

このFateシリーズとソニーの関係は、2011年放送開始の深夜アニメでアニプレックスが製作委員会の幹事会社となった際に始まった。今では劇場版アニメやフィギュアなどのグッズ、アニメ主題歌を歌うアーティストのレコード収入など、多面的に展開する。シリーズ全体には根強いファンのベースが育った。

ソニーは「スヌーピー」の権利会社に出資することも発表した(画像:ソニー)

さらに5月14日には、世界中で愛されるキャラクター「スヌーピー」の権利会社への出資も発表。キャラクターのライセンス収入を得られるだけでなく、具体的には未定ながら、ゲームや映画など事業横断的な活用が期待される。現在ソニー社内ではグループ内で持つコンテンツの相互利用を推し進めており、「日常業務として、他事業部との話し合いの機会が多くなってきた」(ゲーム子会社ソニー・インタラクティブ・エンタテインメントの小寺剛社長)。

売り切りから持続的収益モデルへ。そして、エレキのソニーから、エレキとコンテンツが補完し合うソニーへ。社内に保有する多彩なキャラクターや音楽が武器となるこれからのソニーは、アマゾンやグーグルといった米国のIT大手とはまた違う、知的財産の”プラットフォーマー”になるのかもしれない。

印南 志帆 東洋経済 記者

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いんなみ しほ / Shiho Innami

早稲田大学大学院卒業後、東洋経済新報社に入社。流通・小売業界、総合電機業界などの担当記者、「東洋経済オンライン」編集部などを経て、現在は『週刊東洋経済』の巻頭特集を担当。過去に手がけた特集に「半導体 止まらぬ熱狂」「女性を伸ばす会社 潰す会社」「製薬 サバイバル」などがある。私生活では平安時代の歴史が好き。1児の親。

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