「子どもと向き合えない」日本の親たちの苦難 時間がありすぎるか、なさすぎるかの両極端

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育休中は、図書館で行われる読み聞かせや、体操教室に通わせることができたが、復帰後それらができなくなり、自分の働き方に疑問を感じ始めた。2年ほど試行錯誤をするが、結局フルタイムの仕事を辞め、薬剤師の資格を生かしたパートタイムの仕事に切り替える。

「私(が子ども)だったら、これがしたい、あれがしたいと思うことを、やらせてあげられていないと思っていました。それが結局つらすぎて、フルタイムの仕事は辞めて、パートにして16時に終わるような仕事にしました。今は子どもをお迎えに行ってから毎日公園で遊ばせたりしています」

「できるだけ公園に連れていきたいし、小学校に入ったら今度は学童で同じような問題で葛藤するでしょう。さらにPTAはどうなるんだろう、受験はどうなるんだろうとかいろいろ考えてしまい……。先の不安ばかり考え、辞めてしまいました」

背景には、前回記事でも書いたように、保育園のプログラムへの疑問もあったようだ。

「保育園での過ごし方は、すごく大事だと思っています。(通っていた園は)夕飯は出してもらえて便利だけど、室内で過ごす時間が長く、もっと外遊びしたいだろうなと思っていて、その分家に帰ってからとか週末にリカバリーしたいと思いながら仕事していたんです。

でも家に帰ってからの時間もすごくハードなところに、自分でハードルを上げてしまって苦しかった。保育園でしっかり教育も受けてるんだなって思えたら、あとは家で無難に過ごしてもいいかなと思えたと思います。いい園に入れたら、働くうえでも安心だなと思う」

彼女はその後、実際に本人が「この園なら任せてもいい」と思える園に子ども2人を入れてからはフルタイムの職に復帰したという。つまり、子どもと向き合いたいという気持ちの中には、自分が子どもと時間を過ごしたいというだけではなく、「十全な育児ができていないのではないか」という自信のなさと罪悪感が含まれていそうなのだ。

一方で「体力を使ってほしい」

では、専業主婦だったら十分に子どもに向き合うことができ、十全な育児ができているのか。それがそうとも限らない。元教師で、夫の転勤に伴って転居した先で保育園が見つからず、専業主婦になった女性。彼女は、平日の子どもの過ごし方について次のように語る。

「水曜は午前保育なので、午後は暇。だから、イベントをやっている近所の児童館に行っています。ほかの日は家に帰ったらだらだらテレビ見ていることも多いですね……。NHKのEテレでゲームができる番組があって、ゲームがやりたくて、テレビを見ている感じです」

次ページ親の「子どもと向き合えない」問題は続く
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