「子どもと向き合えない」日本の親たちの苦難

時間がありすぎるか、なさすぎるかの両極端

アメリカで非常に話題になり、2017年に邦訳されたアメリカ・プリンストン大学法学部長のアン=マリー・スローター氏『Unfinished Business(邦題:仕事と家庭は両立できない?)』も、「子どもと向き合えない問題」をテーマにしている。著者が国務省の政策企画本部の本部長となり、毎週ワシントンに通う生活をしていた時、10歳、12歳だった子どもたちに問題行動が目立つようになり、家庭を優先し国務省を去ったことをきっかけに書かれた本なのだ。

この子どもとの時間の埋め合わせ、子どもと向き合うこと問題が今、日本でも子育て中の多くの家庭を直撃している。

「この子はちゃんと育つのかな」

子どもに向き合う必要。それは、子どもからの直接的・間接的なSOSとして発せられることもあるだろうし、親側の「このままではわが子の発達に影響があるのでは」という懸念や罪悪感から発生することも多い。

私が大学院で高学歴の母に対する調査研究で話を聞いた事例から引用しよう。2歳、6歳の子どもを持つ30代の女性は、フルタイムで法曹関係の仕事についていた頃のことを次のように振り返る。

「1人目の育休復帰後、朝は(自分が早く出勤するため)夫が子どもを保育園に連れていき、お迎えはベビーシッターさんだったので、私は半年くらい保育園に行ったことがなかったんです。週末に作り置きしていた離乳食をチンして食べさせてもらって、(午後)8時か8時半くらいに私がぎりぎりで飛び込んで帰ってきて、そのままお風呂に入れて、そのお風呂の後の着替えまで(ベビーシッターに)手伝ってもらって、シッターさんに“さようなら”して、あとは寝るだけみたいな生活でした」

「寝る直前まで両親どっちも帰ってこないような生活を続けて、この子はちゃんと育つのかなとだんだん思うようになりました。自分がしたかった育児の実態と現状があまりにも違い、いろいろ考えるうちに仕事もうまくいかなくなってきた」

彼女はその後、専業主婦になり、「小学校低学年くらいまでは習い事の面倒も含めて自分がしっかり育児したいという気持ちがあるので、育児の時間を第一に」と考えている。その後については「非常勤とかパートタイムで、働ける場所を探すことになる。(その仕事が)どこまであるかはちょっと悩みどころですね」と語る。

医療系企業に勤務していた女性も、「子どもとの時間」のために働き方を変えた1人だ。フルタイムで会社勤めをしていたときのことを次のように語る。

「たとえば本を読んであげたり手遊びをしたりとか、子どもが質問することに丁寧に答えてあげたり、実際に見てあげたりとか。そういうことに付き合ってあげる余裕を持てたらいいのですが、ただでさえ、ご飯食べさせて、お風呂に入れて寝かせるしか時間が残っていない。どう折り合いをつけるか、すごく難しかったです」

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