《よく分かる世界金融危機》サブプライム関連損失はどこまで膨らむのか
米国住宅ローン市場で焦げ付きが増えるにつれ、金融機関が負うサブプライム関連損失は底なしに増えている。貸倒引当金の積み増しに加え、流通市場がマヒしたローンや証券化商品の時価評価切り下げも進む。サブプライム以外の住宅ローンや、消費者ローンなど住宅ローン以外の不良債権化も進んでおり、最終的にどこまで損失が膨らむのか、予想は難しい。
10月7日に国際通貨基金(IMF)が「世界金融安定報告」の中で公表した数字がある。サブプライム関連など米国のローン・証券化商品で世界の金融機関が最終的に被る損失の合計額を1兆4050億ドル(約140兆円)と試算。今年4月段階での予想額9450億ドルから約5割の増額だ。これまで世界の金融機関が処理してきた額は約7600億ドル(今年9月末段階)であり、残りの要処理額は約6500億ドルということになる。
金融機関の中でも銀行(投資銀行を含む)に限っていえば、予想損失額は7250億~8200億ドル。これまで処理した額は5800億ドルなので、大きな峠は超えたという見方もできる。一方、ファニーメイなど住宅金融公社の予想損失額は1000億~1350億ドルと見ており、過去に処理した約200億ドルの数倍に上る。保険会社やヘッジファンドを含め、銀行よりむしろノンバンクの処理が遅れていることにも注目すべきだ。特にヘッジファンドには大手銀行や証券会社が投融資しており、株安の影響を含め、今後の地雷原となるおそれが強い。
クレジットカードや企業融資にも損失波及
注意すべきなのは、たった半年で損失見通しが5割も増えたことだ。その要因としてIMFでは、景気見通しが悪化する中、サブプライム関連にとどまらず、プライム(信用力の比較的高い債務者)向けの住宅ローンや、クレジットカードローン、企業が発行する社債、企業向け貸し出しにまで直接償却や時価評価切り下げが波及してきたことが大きいとしている。
それは最近の米銀決算を見ても裏付けられる。たとえば今年7~9月期に28億ドルの赤字と4四半期連続の赤字となったシティグループ。同期の不良債権処理費用は91億ドルと前年比86%増加したが、その主因は北米の消費者ローン、クレジットカードの貸し倒れ償却費用が急増したことだった。
また、同じく7~9月期に前年比67%の減益となったバンク・オブ・アメリカは、「不良債権は当初、ホームエクイティローン(住宅の含み益を担保としたローン、第2抵当)や住宅建築業者向けが中心だったが、今では第1抵当の住宅ローンや無担保の消費者ローン、クレジットカードへと波及した」とコメントしている。特に悪化が激しいのがカリフォルニア、フロリダ両州で、住宅価格の下落と失業率上昇の影響が大きいという。