《よく分かる世界金融危機》サブプライム関連損失はどこまで膨らむのか

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一般企業向け融資の焦げ付きも徐々に進んでいる。水準的にはまだ低いとはいえ、今後、景気後退が深まってくれば、不良債権の大幅増大は必至だ。米国の景気後退が深刻化するのはまさにこれからであり、損失見通しは今後も増えていく公算が大きい。

しかも、IMFの推定は米国の資産を対象にしたローンや証券に限定されており、米国外のローンや証券の損失は含まれていない。英国やスペインなど欧州では今世紀に入って、米国以上の住宅価格の値上がりが続いてきたが、ここに来て完全にバブル崩壊が始まっている。欧州ではサブプライムローンの比率が米国に比べ低いとはいえ、住宅価格の下落や景気悪化が続けば、ローン関連の損失はうなぎ上りに増加するだろう。

野村証券のチーフエコノミスト、木内登英氏は、欧州で今後発生する不良債権を含めた金融機関が抱える潜在的な損失を2・3兆ドル(約230兆円)と見積もっている。一部には3兆ドル説もあり、予想は膨れ上がる一方だ。

サブプライム関連のローンや証券化商品は今、取引がほとんど成立せず、時価がないに等しいとさえいわれる。サブプライム関連以外の不良債権化も進んでおり、今後の景気悪化でさらに不良債権の増大が加速するのは確実だ。「金融当局も不良債権の実態をつかみ切れていない」(国内金融当局関係者)。各国が公的資金注入を決めながら、金融市場が安定しないのは、損失の規模がいつまで経ってもわからない不透明感が背景にある。

しかも、こうした損失はあくまで金融機関がローンや証券化商品において負う損失だ。今回の世界的金融危機は株価や不動産価格の下落、景気後退などを通じ、金融機関に限らず、あらゆる経済主体に損失をもたらしている。その損失が最終的にいくらになるのかは想像を絶する。

ちなみに、株安による世界の株式時価総額の目減りは過去1年間で約3000兆円に達したと推定される(国際取引所連盟のデータを基に推計)。これは日本の国内総生産(GDP)のほぼ6年分に相当する巨額だ。こうした富の喪失が逆資産効果となって、世界景気を冷やし、不良債権が増大、さらにマーケットを下押すという悪循環が最も怖い。

<KEY WORDS>
国際通貨基金(IMF)
 通貨と為替相場の安定化を目的とした国際連合の専門機関。本部は米国のワシントンD.C.。現在の加盟国は185。1944年7月、米国ニューハンプシャー州のブレトンウッズで開催された国連会議で設立が提案され、45年に設立された。1930年代の大恐慌の原因となった通貨切り下げ競争の悪循環を繰り返さないための経済協力が設立目的。国際収支が悪化した国への融資や、為替相場と各国の為替政策の監視などを行っている。

ヘッジファンド
 伝統的な株式・債券の投資とは違い、株式・債券からオプション・先物までさまざまな運用手法を用いて、絶対的なリターンを追求する私募の投資ファンド。上昇相場でも下落局面でも収益が得られるよう、リスクをヘッジするよう仕組むことが特徴。組成や運用手法に規制を受けることを避けるため、カリブ海などの租税回避地(タックスヘイブン)に所在地を持つものが多い。世界中には8500以上、運用資産残高は120兆円を超えるともいわれる。

(週刊東洋経済)

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