金足農「投手の玉砕」を賞賛する甲子園の病 いったい誰のための高校野球なのか?

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高校生の世代で短期間に膨大な球数を投げれば、その後の野球人生に深刻な影響を与えるのは、疑問の余地がない。選手生活も短くなり、投手を続けられなくなる可能性さえある。

それが自明でありながら、日本の高校野球は毎年のように登板過多の投手を出している。そして多くの大手メディアは、これをもろ手を挙げて賞賛している。

確かに今年の金足農業のように、地方の公立農業高校が決勝まで駆け上がるのは、快事ではあろう。地方経済が縮小し、農業も高齢化が進む中、日ごろは家畜の世話をし、田畑で農作業を学ぶ高校生が大活躍すれば、地元の人々は大いに勇気づけられるだろう。

メディアの役割

しかし、それを報じる一方で、投手の酷使による健康被害について懸念を示すのが、健全なメディアではないのか。

テレビのワイドショーも連日、金足農業の活躍を取り上げた。試合に勝った日に高校で豚が9匹の子を産んだことまでにぎやかに報じたが、投球数に関する報道は極めて少なかったように思う。それどころか、ある野球評論家は決勝戦の前に「吉田君は投げ方がいいから、肩や肘に負担がかからないので大丈夫ですよ」と発言していた。これはきわめて無責任な意見だと思う。

8月20日に甲子園で行われた始球式に臨んだ桑田真澄氏は、金足農業の吉田に「僕も大阪大会で5連投した経験者として、もしも痛いところが出たらすぐに声を出してほしい」とアドバイスしたと報じられた。桑田氏は投手の酷使を懸念し、高校野球改革の必要性を訴えているが、その記事の扱いは極めて小さかった。

ネットでは、橋下徹氏をはじめ、投手の酷使、登板過多に対する懸念を表明し、甲子園の仕組みを改革すべきだという意見が数多く発表されている。しかしその多くは雑誌系メディアであり、新聞系のメディアはほとんどこれに触れていない。また論じているのは橋下氏など外部の有識者やフリーライターなどであり、大手新聞の記者で明確な意思表示をした人はほとんどいないのではないか。

まるで甲子園の投手の酷使や、球数制限について触れるのは、タブーであるかのようだ。

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