「共同親権」の導入で子どもたちは救われるか 離婚家族、当事者たちの声を聞く

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そこで、しばはしさんは夫婦問題カウンセラーの資格を取ることを決意。面会交流を見学するなどした結果、自分自身が変わって、子どもの父親である元夫に向き合わなければいけないと思ったという。

「子どもの情報を夫に伝えようと連絡をとることにしたのです。劇的に関係は改善しました。元夫も憤りが静まり、“ありがとう”と言ってくれる。“ありがとう”ともっと言わせたいと思ったら、苦しかった気持ちがスッと楽になったんです」

現在は月に2回、子どもは元夫の家に泊まりに行く。しばはしさんが仕事で忙しいときは預かってもらい、学校の保護者会に行けないときは出席してほしいと伝え、学校から子どものことを注意されたら、それを父親から伝えてもらうなど、

「育児のいいところだけでなく、たいへんなところも分担してもらうようにしています」

共同親権には賛成の立場だ。

「共同養育するために離婚後の親同士の関係構築は必須です。公的な支援も、ひとり親支援は充実していますが、共同親権になれば支援体制も変わってくると考えています。

子どもは離婚後も共同で育てていくのが当たり前だと認知され、社会に浸透すれば、離婚すると親はひとりという固定概念が払拭されていく

「パパとママの離婚は私が原因でしょう」

都内の出版社に勤める水戸耀司さん(仮名、50)は現在、小学6年生になった娘(11)と暮らすが、彼女が2歳半のときに、夫婦のいさかいは始まった。離婚裁判や面会交流調停など長い不毛な戦いを余儀なくされた水戸さんは、

「共同親権であれば、裁判をすることだってなかった。今まで裁判費用で500万円ほど使いました。バカげたお金ですよ」

と精根使い果たした長期戦を回想。娘はのびのびと元気に過ごしているが、最近言われたことが心に刺さっている。

「“パパとママが離婚したのは、私の取り合いが原因なんでしょう”と自分を責めることを言うんです。違うよと伝えてはいるのですが……」

水戸さん(写真:週刊女性PRIME)

2歳半の娘を連れ去った元妻は、夫からDV被害を受けていると警察に通報し、DVを理由に離婚裁判を申し立てた。結果、DVがでっち上げだと証明され、離婚は認められなかった。判決まで2年の月日を要した。水戸さんが、可愛い盛りの娘に会うことができたのは、娘が連れ去られてから1年2か月後だった。

「私と会わせて大丈夫か確認をする試行面会で会えました。最初、きょとんとした顔をしていました。肩車をすると、“パパ”って言ってくれたんです。娘は肩車が好きでいつもせがまれていましたから」

面会交流も、“病気だ”“運動会がある”などと嘘の言い訳をでっち上げられ、8か月間も会えなかったことも。

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