「連れ去られた子ども」を苦しめる制度の正体 なぜ子が「別居した親」の元に戻るのか
「タクシーに乗ってパパの家に帰ってきたとき、吐いちゃった」
服部美優ちゃん(10歳、仮名)は愛犬ジョンをなでながらつぶやいた。
都心から1時間のベッドタウンに来ていた。美優ちゃんは某社の写真記者、服部貢さん(47歳、仮名)の一人娘である。
3月末の平日、美優ちゃんはたった独りきりで、母親一家の住む団地から、父親(貢さん)とその母(美優ちゃんの祖母)の住む一軒家まで逃げ帰ってきた。
母親宅から駅までは約600メートル。そこまで歩いてタクシーを拾い、さらに十数キロ離れた父親と祖母のいる家まで乗りつけた。タクシー代は家にいた祖母に払ってもらった。というのも、逃亡を警戒した母親に財布などの所持品をすべて取り上げられていたのだ。
「ほっとしたから吐いちゃったの?」
私が尋ねると美優ちゃんは茶化すように答えた。
「嫌なことはジョンにペロペロなめられて忘れちゃった。ねえジョン」
美優ちゃんの複雑な心情を察した私はそれ以上、真意を強くは聞けなかった。
2歳のときに母親に「連れ去られた」
7年前の10月、美優ちゃんは2歳のとき、母親によって同じ県内にある母親の実家に“連れ去られ”てしまった。以後、美優ちゃんは母親や祖父らとともに暮らした。
一方、彼女の父母は泥沼の法廷闘争を行ってきた。
美優ちゃんを“連れ去って”から1カ月後、母親は父親(貢さん)に対し離婚調停を起こした。DVの証拠として母親が提出したのは、父親が母親の腕をつかんだためにできたアザの写真など。しかし、業界紙の写真記者である父親は写真のウソをはじめとする母親側のDV主張をことごとく論破、その結果、母親側の求める離婚や慰謝料の請求は退けられた。
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