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言葉が追いついていないケア、自分ではなく物差しが変わる/『ケアと編集』白石正明氏に聞く

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『ケアと編集』著者の白石正明氏
「ケアをひらく」シリーズの書籍の一部(撮影:尾形文繁)
[著者プロフィル]白石正明(しらいし・まさあき)/編集者。1958年生まれ。青山学院大学法学部卒業。中央法規出版を経て96年に医学書院入社。98年に雑誌『精神看護』、2000年に「ケアをひらく」シリーズを創刊。同シリーズは19年に毎日出版文化賞を受賞。24年3月に定年退職。
「ケア」と聞けば、介護、世話などを思い浮かべる人が多いだろう。ところが、医学系専門出版社・医学書院の書籍シリーズ「ケアをひらく」から出版された書籍は、驚くほど多彩だ。病気や障害の当事者、医療や福祉の専門職、哲学者、美学者、作家らがさまざまなテーマを深掘りする。同シリーズを長年1人で担当してきた編集者に話を聞いた。
ケアと編集 (岩波新書 新赤版 2063)
『ケアと編集 (岩波新書 新赤版 2063)』(白石正明 著/岩波新書/1056円/254ページ)書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします。

──2000年のシリーズ創刊以来、50冊が出版されました。

医療者向けの専門書を刊行する出版社でマイナーな部門として、本の中身については何も言われず自由に作ることができました。

──ケアは医療界ではマイナーな分野なのですか。

医療界は基本的には、科学的なものに価値を置く医者の原理で動いています。看護師は医者に自分たちがやっていることを何とかわかってもらおうとしますが、科学の世界からは非論理的に見えてしまう。語り方自体も、看護師自身と患者の言葉が混ざり合ったり、主語があいまいになったりして。

でもそれは、看護というのは患者にシンクロしないとできないからなんです。だから実は極めて正確に話している。それを科学の物差しに合わせようとしても行き止まりだけど、もっと日常に近い、言語能力の高い人たちのいる人文界の人なら通じるかもしれない。そこで、「ケアをひらく」シリーズは人文書として読まれてほしいと思って出してきました。

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