「共同親権」の導入で子どもたちは救われるか 離婚家族、当事者たちの声を聞く
子どもの引き渡しを求めた審判を申し立て、熊田さんが2人の息子に面会できたのは、連れ去り後から3か月後のこと。
「裁判所の試行面会でやっと会えたのですが、私のことを警戒した様子でした」
会えなかった間、父親は母親にまつわるエピソードを捏造し子どもに刷り込んだ。
連れ去りから約1年後に離婚が確定し、親権は熊田さんのもとに。連れ去られた側に親権が認められるのは珍しいケースだ。
「共同親権になれば、私のように、子どもを連れ去って親権を獲得する“有利な離婚”ができなくなると思います」と法改正に期待する。同時に、
「面会交流権は親が子どもに会う権利だけではなく、子どもが親に会う権利でもあるんです。新しい家族を大切にしてほしいと思いますが、この子たちにも会ってほしいと思います」
熊田さんがそう訴えるのは、離婚後、週に2~3回会いに来ていた元夫が再婚後、だんだんと子どもに会いに来なくなり、息子が送るLINEにも既読スルー……。
2人の子どもは無邪気で「お父さん大好き!」と声をそろえる。昨年の11月、有希くんの誕生日のお祝い以来、会えていないという。
「パパに会いたいよ」
遠慮がちに有希くんが伝えた言葉が切なかった。
再婚後の親権選択について前出・青木教授が説明する。
「欧米では、共同親権を持つ父母が子どもの意見を聞きながら、再婚後の養育についてどうするかを話し合い、親権のあり方を再度、選択することになります」
親同士の関係構築が必須
元夫への恐怖感、拒絶感が強く「離婚後も連絡をとる必要があるとは思いもしなかった」と話すのは一般社団法人『りむすび』の、しばはし聡子代表。別居・離婚後に子育てする親をサポートする共同養育コンサルタントを務めているが、ご自身も何の知識もなく離婚に踏み切り、憂うつな思いをしたことがあったという。
「離婚はできましたが、調停で面会交流が月に1~4回という取り決めがなされた。息子に会いに来るたび、頭を抱えていました。元夫に息子を会わせるのが嫌でした」
と振り返る。
離婚したのに元夫と関わりたくない。だが、息子は父親と会うことを喜んでいる……。