仏像がここまでブームになった源流にある本

いとうせいこうとみうらじゅんが火をつけた

仏像のエンターテインメント化を探ります(写真:sofiaworld/iStock)

近年、仏像がブームになっている。

契機は2009年。同年3月31日から6月7日のあいだ、東京国立博物館で開催された「国宝 阿修羅展」が約95万人という、記録的な入場者を得て話題になった。以後も、2011年の「『空海と密教美術』展」が約55万人、2017年の特別展「運慶」が約60万人を迎えるなど、仏像関連の展示には、比較的安定した人気があるようだ。仏像を取り上げた雑誌の特集記事や、カジュアルな仏像本も、現在に至るまで数多く刊行されている。

仏像がブームになっている理由

源流の一つとされるのが、いとうせいこう×みうらじゅんの『見仏記』だ。同書は、『中央公論』での連載などに基づき、1993年に単行本が刊行され、1997年に文庫化された。また、海外篇などの続編も、複数冊にわたって出ている。さらに、関西のCS放送などでは「TV見仏記」が放映され、こちらはDVD化もされた。現代日本人に、さまざまな「仏」を「見」て、あれこれと自由に語ることの楽しさを教えてくれる代表的な読み物が、『見仏記』であると言えるだろう。

そもそも仏像を寺院や博物館などで見て楽しむ風習は、いかに形成されたのか。拙著『仏像と日本人―宗教と美の近現代』でも詳しく解説しているが、『見仏記』もまた、これら近現代の仏像をめぐる文化の一部である。

作家や思想家などの文化人が、多彩な仏像と対面して、その美しさの理由や、仏像から受け取った感触について、自分が思ったことを自由に書き綴る。これは、大正時代の和辻哲郎が『古寺巡礼』で確立したスタイルと言ってよく、『見仏記』は、その平成時代のアップデート版と位置づけられる。

実際、同書の著者の1人である、いとうせいこうは、和辻の『古寺巡礼』を参考にしている。そのうえで、和辻との差別化をはかりながら、みずからの文章を執筆した。『古寺巡礼』は、1919年に岩波書店から刊行された後、ロングセラーとなり、仏像鑑賞に関する文章の、一つの基準点となった。その後の文化人による仏像巡りの著作は、おおむね何らかのかたちで、『古寺巡礼』を意識しながら書かれてきた。

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