「大物女優」をねじ伏せたLGB「T」の理想と現実 日本も他人事ではないハリウッドの降板騒動
ショーン・ベイカー監督とプロデューサーらは、脚本の執筆にあたり、リサーチを重ねる中で知り合ったトランス女性らの声を反映した。そのうえで、キャストにはほぼ素人を起用し、予算10万ドルに対して9倍以上の収益をあげた。
主要キャストのマイア・テイラーは、アカデミー賞の前哨戦の1つともいわれるサンフランシスコ映画批評家協会賞とインディペンデント・スピリット賞などで、トランス女性として助演女優賞を複数受賞するという、史上まれに見る快挙を成し遂げている。
また、Netflixのドラマシリーズ『オレンジ・イズ・ニュー・ブラック』で不動の地位を築いたラヴァーン・コックスは、トランス女性としてはじめてエミー賞にノミネートされ、高い評価を受けている。
ヨハンソンを批判したリセットは、アマゾンプライムの人気ドラマシリーズ『トランスペアレント』で主要な役を演じている。同じくヨハンソンの配役に抗議の声をあげたクライトンも、Netflixのヒットドラマ『センス8』で主役の1人に抜擢されている。
このように、アメリカではトランスコミュニティから演技力やスター性のある人物が出てきている。
映画界でも就労への配慮が必要
ところが、アメリカの映画スタジオは決して積極的ではない。
アメリカ国内でのLGBTQに関するメディアモニタリングを行っている団体「GLAAD」の調査によると、ソニー・ピクチャーズ、ワーナーブラザーズ、ウォルトディズニースタジオなど主要映画スタジオ7社で2017年に製作された作品の中で、トランスジェンダーは一切登場していないという。
トランスが映画、テレビ業界で俳優として雇用の機会を得るのは、かなり困難な状況だ。
この問題は、シスに対してトランスが、不当な差別を受けやすく不平等な地位に置かれる社会問題とも関わってくる。そうである以上、現実を意識した配役、つまり就労への配慮が必要になってくるはずだ。
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