「大物女優」をねじ伏せたLGB「T」の理想と現実

日本も他人事ではないハリウッドの降板騒動

その意味では、現在アメリカで放送されているテレビドラマ『Pose』の製作チームは注目に値する。140人以上のトランスはじめ、LGBTQである人々をスタッフとして雇用しているのだ。

80年代後半のニューヨークを舞台にトランスらが描かれる本作を手掛けているのは、ミュージカルドラマシリーズ『glee/グリー』の製作総指揮、脚本、演出でも知られるライアン・マーフィーだ。

彼自身がゲイでLGBTはじめ性的マイノリティとの関わり合いが強く、かつヒットメーカーであるため、こうした配役、スタッフ起用が成立したのではないかと考えられる。

女性の権利問題の運動でもアメリカでよく知られているトランス女性のジャネット・モックも、脚本家、演出家、プロデューサーとして製作に関わっているという。

アメリカのテレビシリーズで、有色人種かつトランス女性という、幾重にもマイノリティ属性を抱えるモックが大役を任されるのは稀有だ。就労など社会進出に困難を抱える多くの性的マイノリティにとって勇気づけられる出来事だろう。

多様な生き方が奨励されるきっかけに

前出のクライトンが出演する『センス8』を作ったウォシャウスキー姉妹も、性別移行したトランスだ。かつて「兄弟」と呼ばれた時代に製作した『マトリックス』シリーズ以来、クリエイターとしてハリウッドで活躍している。

アメリカでは、トランスの俳優やクリエイターたちが仕事をこなすに足りるだけの十分なスキルを備えてきているという状況がある。ヨハンソンも映画の降板を表明した際、「映画業界における多様性を奨励する」という主旨のコメントを出している。

ハリウッドでの「トランスがトランスの役を演じるべき」という議論が日本にも波及し、多様な人々が登場し、多様な生き方が奨励されるきっかけが生まれてほしいと思う。

(文中敬称略)

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