真奈さん相手に吐き出していくうち、転職した先で、プロジェクトを任されたものの新しい環境でどう力量を発揮すればいいか迷っていたこと、自分が目指す未来がぼんやりとしていたことなど、自分の中でもこんがらがっていた糸がするするとほどけていくのがわかった。
真奈さんは、とにかく口出しはせず、話を促すとともに、壁に貼った透明の簡易ボードに、力さんの意見を書き出していった。
「夫婦といっても、夫のことをほとんど知らなかったんだなあとも思いました。『へえ、そんなこと考えてたんだ』って」(真奈さん)
お互いがそれぞれの問題を出し、聞き合う
それだけでお互いの気持ちがスッキリしていることに気が付いた。
それから2年。2人は今も四半期に一度、ホテルでの「夫婦合宿」を続けている。最近は玄くんも一緒に、行きつけのホテルに泊まる。テーマはお互いの仕事のことや、プライベートでやってみたいこと、家族のライフプランや夢などその時に応じてさまざま。1回目こそ、力さんの仕事の悩みに絞ったが、その後は、お互いが自分の中の問題を出し、聞き合っている。
この夫婦会議を通して、料理好きの力さんがイタリアに短期滞在して習ってきた手料理を振る舞う「おうちバル」を開催するようになったり、農林水産省に勤務する真奈さんが食や農林水産業を考える朝活「霞ヶ関ばたけ」の活動を広げる、仕事以外でのアクティブな活動も実現してきた。
「必ずしも、毎回問題が解決したり、夢がすぐに実現するわけじゃありません。自分の中だけだと、やりたいことをどう実現していけばいいかわからないときでも相手に聞いてもらってスッキリすることで、自然と次の一手がわかるようになるんですよね」(真奈さん)
さらに、「家族会議」には、思いがけない効用もあった。育児や家事の分担もスムーズにいき、日常生活では特に問題はないという2人。とはいえ、やはり共働きでの育児は大変だ。日によってはほとんど顔を合わさないときもある。お互いいっぱいいっぱいだと不満も出るし、些細なことで喧嘩になりやすい。だからこそ、特に疲労がたまっている夜は、深い話はしないことにしているという。
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