「若い社員」が次々辞める会社に足りないもの 1カ月や1週間という超短期離職も増加中

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そうなると本当に危ない。そんな会社の状況を一人がSNSで拡散すれば、一夜にしてブラック企業のレッテルを張られる可能性も。そんな情報は就活中の学生も見てるから、採用するのも難しくなる。今の若者はブラック企業という言葉にとても敏感ですから。

ネガティブ面も伝える「職務予告」が必要

──内定者に辞退されない策がいよいよ重要になってきますね。

山本寛(やまもと ひろし)/1957年生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、銀行、市役所に勤務。立教・明治大学の2大学院を経て、2003年から現職。博士(経営学)。著書に『「中だるみ社員」の罠』『自分のキャリアを磨く方法』『人材定着のマネジメント』『転職とキャリアの研究』ほか(撮影:吉濱篤志)

採用後は実際どんな働き方をするのか、きれい事ではない、ネガティブな面もきちんと志願者に伝える「現実的職務予告」が大切です。期待を胸に入社してきて、「こんなの聞いてないよ」と幻滅してしまうことを防ぐ。たとえば2〜3年目で地方勤務があるなら、そのことを伏せずに明言しておく。

入社後の定着のためには適正な配置も求められます。今の若者はただでさえやりがい志向が強い。本人のやりたいことと適性がマッチする場所を見つけてあげる。学生時代にこんな研究をしてきた、生かせる資格も取ったなど、納得できる能力の裏付けを持って一つの部署を志願する社員は、できるだけ優先してその部署に配属する。

ただ、現実的に全員には無理ですよね。その場合は、会社は長期的に一人ひとりのキャリアを配慮している、適正配置のために努力しているということをわかってもらう。「キミのことをちゃんと見てるよ」というメッセージを発信することが重要なんです。

──やはり小まめなコミュニケーションが欠かせない?

ええ、それも単に密なコミュニケーションとか熱のこもった指導ではなく、部下の意見や考えを聞きつつ、褒めながらヤル気を高めるマネジメント。「俺についてこい」的な親分子分風はもう古い。“教育”よりも面談などでこまやかに本人の希望や不満をフォローする。

あとは運動会や社員旅行など全体のコミュニケーションの場を、強制ではない形で作っておくのもいい。カラオケに誘ってみるとか趣味のサークルとか、複数のチャンネルで若手が自発的に参加できる場が望ましいです。メンター制度の導入や、ブラザー・シスター制度といいますが、2〜3年上の先輩が月イチで飲み会を開いて、不満を吸い上げたり、自分の失敗談を通してアドバイスしたりする機会が新入社員を支えますよね。

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