父親になる人生を選択してみたくなった
「姉が子どもを産んで実家に帰ってきたんです。子育てをしている姉を見て、急に結婚を身近に感じた。仕事仕事でここまで来たけれど、自分も結婚して家庭を築き、父親になる人生を選択してみたくなったんです」
入会面談にやってきた進藤昇(38歳、仮名)は、言った。大学卒業後は外資系企業に勤め、20代後半で単身アメリカに渡り、大学でMBAを取得して帰国。現在も外資系で働いている。背も170センチあり、見た目も爽やかで清潔感がある好青年だった。
実は、進藤が私の事務所にやってきたのは2度目。スタッフが、日にちが土曜日なのに、曜日は日曜日で伝えていた。彼は日にちを頼りに土曜日にやってきた。私は日曜日が面談だと思っていたので、土曜日は体調を崩した娘を病院に連れていっていた。
土曜日に来た彼は、事務所で行き違いの経緯を知り、翌日出直してくれた。会ったときにまずは私がそのことを詫びると、彼は言った。
「誰にでも間違いはありますから。それよりも娘さんは、大丈夫ですか?」
怒るどころか、娘を心配してくれた気遣いに、彼の人となりを見た気がした。“いいご縁を結んであげたい”。心からそう思った。
面談を終えると、即決で入会を決めてくれた。そこで、スタッフがこれからの手順を説明した。写真を撮り、プロフィールを作ること。また、入会にあたっての独身証明書、住民票、収入証明書、短大卒以上の場合は卒業証明書、資格を有する職業の場合はその証明書などの必要書類を提出していただくこと。
説明を終えると、進藤は言った。
「近くにコンビニありますか? 手続きのおカネをおろしてきます」
何もかも行動が早かった。
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