その夜、昇から私に電話があり、彼は彼で怒り心頭に発していた。
「もう本当に子どもじみていますよ。戻ってきた式場の人も驚いていました。残された自分も恥ずかしかった。なんだか、このまま結婚していいのかなって。家の手付金を払いましたけど、キャンセルしてそれが返ってこなくても、痛い人生勉強だったと思うしかないですね」
その電話を切ったすぐ後に、私は真知子に電話をした。と、真知子も怒りが収まらずにいた。
「結婚式場の人の前で、お義母さんがこの結婚をよく思っていないとか、言ってほしくなかった。おカネのこともそうですけど、頑固で、自分が言ったことは絶対に譲らないし、私の気持ちを考えてくれない。私、もしこの結婚がダメになったら、もう一度鎌田さんのところでお見合いするので、よろしくお願いします」
思い立つとなんでも行動を起こすのが早い昇、一方普段はほんわかとしているが負けん気の強い真知子。私は“すわ、婚約破棄か!”と、ドキリとした。
紆余曲折を乗り越えて夫婦になっていく
しかし、そこから数日後、昇からメールが入った。
「いろいろお騒がせしてすみませんでした。自分はどうやら真知子さんに心底惚れてしまったようです。昨夜、仲直りをしました」
昨夜、いったい何があったのか。
その日から3日後に、昇は海外出張に行くことになっていた。3週間は帰ってこない。「その前に仲直りがしたい」と真知子は思ったようだ。昇の会社の前のガラス張りのカフェで、仕事を終えて彼が出てくるのを待ち伏せした。それを知らずに会社から出てきた昇は駅に向かって歩き出した。と、後ろから、「ごめんよ!」「ごめんよ!」と言いながらぶつかってくる女がいたという。
そのときの様子を、昇は私にこう話してくれた。
「“なんだ、失礼なヤツだな”と思って振り返ったら、真知ちゃんだったんです。自分と目が合うと、『ごめんよ!』とまたぶつかってきた。なんだかその様子がかわいらしくて、愛おしくて、その場でギュッと抱きしめてしまいました」
お見合いから2週間で結婚を決めた。そこからは私が知る限り、お世話した会員の中でも一番のドタバタ劇を繰り広げた2人だったが、お見合いしたエイプリルフールからちょうど1年後の4月1日に、誠の入籍。
そして、4月の吉日に結婚式を挙げた。そのとき真知子のお腹の中には、小さな命が宿っていた。
この夏、2人は父と母になる。
おめでとう。思いやりあふれるあたたかい家庭をつくってね!
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら