1本10億円のワインが誕生する「合理的理由」 なぜこれほど「ピンからキリまで」なのか
ワインの原料は100%ブドウです。通常ワインは、1.2キロ~1.5キロのブドウから約1本(750ml)造られます。3リットル瓶は4本分ですから、4.8~6キロのブドウを使って造られたとすると、10億円ワインの原料ブドウの1キロ当たりの価格は……なんと2億~2億5千万となります。いくら手塩にかけて栽培したブドウでも、1キロ2億円以上はありえないでしょう。
ところが、ブドウがブドウ酒になった途端、あながちありえない話ではないのです。ということは、原料以外の製造コストに秘密があるのでしょうか。
まずは、原料以外の製造コストの差はどこで生じるのか、1例を挙げて見てみましょう。
1000円以下のワインにオーク樽の香りはあり得ない?
ワイナリーを見学して一番目につくもの、それは薄暗いセラーのなかで鎮座するオーク樽です。
オーク樽が1つもなく、ステンレスタンクだけしかないワイナリーだとしたら、少し興ざめですよね。でもすべてのワインにオーク樽が使われているわけではありません。赤ワイン、特に熟成タイプの赤ワインにはオーク樽は不可欠ですが、一部の品種を除いて、多くの白ワインはオーク樽を使わないでも素晴らしいワインに仕上がります。オーク樽は決して安い買い物ではありませんから、使わなくても良いワインができるのならば、それに越したことはありません。
オーク樽の価格もピンからキリまでありますが、平均すると1樽(容量225リットル)フランス産で約15万円、アメリカ産で10万円もします。樽由来の香りや成分は使用すればするほど抽出されなくなるので、いわゆる高級ワインといわれるものは、主に新樽で熟成されることになります。するとどうなるでしょうか?
毎回新樽で熟成されるワインの製造コストは、ステンレスタンクや使い古しの樽で熟成されるワインよりも当然高くなります。つまり、1樽でワイン約300本分ですから、最低でも1本当たり「500円」を製造コストに上積みしないと、樽のコストを回収できないことになるからです(15万円のフランス産オーク樽で計算した場合)。だとしたら1000円以下のワインにオーク樽の香りはありえないはずです。
ところが、です。1000円以下のワインにも、たまに500円クラスのワインにだって樽香がしっかりついていたりします。不思議ですよね。
では種明かしです。樽香のもとは、「オークチップ」です。
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