吉田麻也の「おっさんと若手」をつなぐ統率力 セネガル戦でマネ封じに一役買った29歳DF

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セネガル戦前日には、長谷部に代わって西野監督とともに会見に登場。コロンビア戦の大活躍で「半端ない点取屋」として話題をさらった大迫のことを「恥ずかしがり屋なところもあるけど、非常に実力のある選手」と賞賛したり、日本サポーターのスタジアムの清掃活動について問われて「プレミアリーグより日本代表のロッカールームの方がキレイだと思う」とユーモアたっぷりに話すなど、とにかく場を盛り上げる術に長けている。

中学生の頃からコツコツと勉強した英語力はネイティブ並みで、外国人メディアからの人気も高い。こういった人格を含めても吉田の存在価値は大きい。セネガル戦はそれが再認識される絶好の機会になったのではないか。

28日のポーランド戦も難敵を抑え込んでほしい

加えて言うと、パフォーマンスの方も少し前までは不安要素を抱えていた。今季イングランド・プレミアリーグでも何度か見られたが、彼はここ一番の重要局面で決定的なミスを犯し、勝てる試合を引き分けるようなケースがあった。代表でもVAR判定がテスト的に導入された昨年11月のブラジル戦(リール)で、開始早々に相手を手で囲い込んでPKを献上したミスなどが印象的だった。

が、自身2度目のワールドカップである今回のロシア大会ではそういう危ないシーンが皆無と言ってもいいくらい、終始落ち着きと余裕を持ってピッチに立っている。その風格とオーラが守備陣やチーム全体にどれだけの安心感を与えているか分からない。

「センターバックというポジションを担っている以上、自分が仲間を引っ張るのは当たり前」と吉田は口癖のように言い続けてきたが、もはやその影響力は長谷部以上と言ってもいいかもしれない。

今後も28日(日本時間23時キックオフ=ヴォルゴグラード)に対戦するポーランドのエースFWロベルト・レヴァンドフスキ(ドイツ1部=バイエルン)筆頭に世界トップレベルのアタッカーと対峙することになるが、彼にはこれまでの経験を全て注ぎ込んで、難敵を抑え込むという課題を確実に遂行してほしい。

(文中敬称略)

元川 悦子 サッカージャーナリスト

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もとかわ えつこ / Etsuko Motokawa

1967年、長野県生まれ。夕刊紙記者などを経て、1994年からフリーのサッカーライターに。Jリーグ、日本代表から海外まで幅広くフォロー。著書に『U-22』(小学館)、『初めてでも楽しめる欧州サッカーの旅』『「いじらない」育て方 親とコーチが語る遠藤保仁』(ともにNHK出版)、『黄金世代』(スキージャーナル)、『僕らがサッカーボーイズだった頃』シリーズ(カンゼン)ほか。

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