「大迫半端ない」を導いた西野監督の調整力 ベテラン・中堅・若手がそれぞれ役目を果たす

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そして原口のハードワークも見る者を感動させた。「最後の5分間くらいは倒れそうだった」と本人も言うが、それでも本田がボールを奪われたところにカバーに入るなど機転の利く仕事を随所に見せた。本人がいちばん見せたかったゴールに絡むプレーは次戦以降にお預けとなったが、彼の献身的な走りがどれだけ大きな影響をチームにもたらすかを多くの人が再認識するいい機会になった。

そういう強固な組織を短期間で作った西野監督のバランス感覚は絶妙だった。オーストリア・ゼーフェルトでの事前合宿まではチームを固定せず、回り道をしているように見受けられたが、6月13日にロシア入りしてから、戦い方とメンバーを定めて入念に準備を進めてきた。選手たちも話し合いを繰り返し、選手ミーティングで思いの丈を語り合うところまでやったというが、その過程で自然と各世代毎の役割を個々が認識していったのではないか。

ベテランと中堅・若手の融合が勝利を引き寄せた

前任者のハリルホジッチ監督は性急すぎる世代交代でチームに軋轢を生じさせがちだった。が、西野監督は30代のベテランの存在価値も大事にしながら、若い力を積極的に活用しようとした。実際、コロンビア戦の軸を担い、試合を引っ張ったのは2度目組と初ワールドカップ組だったが、3度目組が年下の面々の背中を強く押したから、チームとして勝利という結果を引き寄せることができたのだ。

ワールドカップ初戦白星の意味は非常に大きい。が、まだ16強入りが決まったわけではない。6月24日の次戦の相手・セネガルはポーランドを撃破するだけの屈強なフィジカルを備えたチーム。今回とは違った戦い方を考えなければならない。そこで西野監督が再び絶妙なチームバランスを築くことができるのか。ここからが指揮官と選手たちの本当の勝負だ。

(文中敬称略)

元川 悦子 サッカージャーナリスト

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もとかわ えつこ / Etsuko Motokawa

1967年、長野県生まれ。夕刊紙記者などを経て、1994年からフリーのサッカーライターに。Jリーグ、日本代表から海外まで幅広くフォロー。著書に『U-22』(小学館)、『初めてでも楽しめる欧州サッカーの旅』『「いじらない」育て方 親とコーチが語る遠藤保仁』(ともにNHK出版)、『黄金世代』(スキージャーナル)、『僕らがサッカーボーイズだった頃』シリーズ(カンゼン)ほか。

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