専業主婦「驚異のネットワーク」の構造的不安 意外に重要だった井戸端会議から見えること

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専業主婦ママたちの話題は、湯水のようにいくらでも出てくる。「昨日子どもがこういうこと言ってきてさ」「〇〇先生って××なんだって」。もちろん、こういう話に慣れていないタイプの人は「結論は?」「手短に」と言いたくなるような話もあるにはあるだろうが、結構ここでの結論のない長話は主婦たちにとって大事なのかもしれない。

だって、夫は帰りが遅いし、ここでママ同士話さないとほとんど大人と話さないまま1日が終わってしまう。誰だって一種の吐き出しは必要だし、この雑談の中で重要な悩みが共有され解決されていくこともそれなりにあるのだと思う。

そして、実際のところ、幼稚園や小学校で親が関与しないといけないことの多いこと多いこと。大体のことはお任せで済む保育園に比べ、やれ行事に何を着せていくだの遠足の準備がどうだの、色々なお知らせがくるのでその都度、「あれ、どうする? どんなの着せていく?」「〇〇ちゃんのお兄ちゃんのときはこうだったよ」「あそこで売ってるよ」と情報収集してその都度買いに行くなり準備するなりする。

そうしないと子どもが1人、当日みじめな思いをするのではないかという意識も働く。みじめな思いとまでいかずとも、少なくとも「みんな、こういうの持ってきてた……」「〇〇ちゃんみたいのがよかったーー!! 今度はそうして!!」と抗議は受ける。

ちなみに、これはシンガポールのローカル幼稚園では日本人以外にも言えることで、学芸会、ハロウィン、クリスマス等々イベントごとに、衣装を持参するように言われる。そのお知らせがかなり直前だったりもする。手作りするにしろ、どこかで買ってお金で解決するにしろ、何かしら親の時間が必要になる。

村八分になったら生きていけない

つまり、専業主婦はお互いに支えあっていて、暇つぶしに見える井戸端会議にも価値がある――。ただし。だからといって、この仕組みを礼賛したいわけではない。

この専業主婦ネットワークのすばらしさは、こういった支えあいの枠組み入れなかった場合を考えると、見え方が変わってくる。人付き合いが得意ではない場合などで、ネットワークに入れないことだってある。馬が合わない人がいる場合だってあるだろう。

それでも、仲間外れになったら、その世界においては致命的だ。これが、周囲に同調し、皆似たような格好、似たような行動になったり、家事・育児のレベルをお互いに上げてしまったりする構造的要因になっていないだろうか。

支えあいは、美しい。でも一歩間違えれば、村八分にされないために毎日気を遣い、自分も貢献し、間違ったことはしないようにしないといけない……というふうに感じる人が出てくるのも不思議ではない。

また、こうした専業主婦前提で母子の世の中がまわってしまうと、共働き家庭や男性はこの情報交換や支えあいにイマイチ入っていけない可能性がある。悪気がなくとも、そこに分断がうまれる。

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