専業主婦「驚異のネットワーク」の構造的不安 意外に重要だった井戸端会議から見えること

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共働き家庭にとっては、保育園で周りも皆が共働きのときはよかった…が、小学生になれば専業主婦家庭と出会う。子どもが「なんで〇〇ちゃんの家はママがいるのに」「〇〇ちゃんみたいに××したい」と言い出す。さらに学校との連絡、イベントや放課後・長期休みの過ごし方に頭を抱える……これがいわゆる共働き家庭の「小1の壁」だ。

就学前と違い、子ども同士の関係も徐々に複雑になる。母親が親のネットワークから外れれば子どもが情報弱者で不利益を被ることもあるし、子ども同士のいじめなどをキャッチできなくなる可能性もある。

世の中的には 「父親の育児を」と言いながらも、専業主夫や父子家庭の父親が母親ネットワークに入りづらいというケースもあるだろう。

専業主婦ネットワークがなくてもいいような世界

専業主婦ネットワークはすばらしい。善意の支えあいは、無いよりもあったほうがいいに決まっている。でも、トートロジーのようだが、専業主婦前提の社会だから、専業主婦にとって、専業主婦同士で支えあうことが必要になっているのではないか。

まずもって夫がもっとまともな時間に帰ってきていたらこんなに孤独になることもないし、日本では社会的に子育てを任せられる場も、特に専業主婦にとって少なすぎる。専業主婦だって子どもを預ける必要があるときはあるし、必要に迫られなくたってリフレッシュのために預けたいときだってある。

働く気があり、「仕事」的な居場所があれば経済的自立、知的刺激、アイデンティティを失わずに済むようなケースでも、預けられる場所が非常に少なく、家事育児にかけないといけない時間を考えると非常に働く先も限られる。

もう少しフレキシブルに育児をしながら主婦が働きやすいような仕事の在り方と育児の社会化がされ、幼稚園や学校は専業主婦が井戸端会議をしなくてもちゃんと情報が伝わり準備ができるような方法で連絡をしてくれたら。

専業主婦前提の社会だから、専業主婦のやることはどんどん増え、専業主婦を脱せなくなる。そして専業主婦になりたくても経済的事情でなれない人や選択的共働き世帯も、四苦八苦することになる。専業主婦とワーキングマザーの対立軸も「女の敵は女」的な議論ではなく、構造的に生じる問題ではないだろうか。

中野 円佳 東京大学男女共同参画室特任助教

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なかの まどか / Madoka Nakano

東京大学教育学部を卒業後、日本経済新聞社入社。企業財務・経営、厚生労働政策等を取材。立命館大学大学院先端総合学術研究科で修士号取得、2015年よりフリージャーナリスト、東京大学大学院教育学研究科博士課程(比較教育社会学)を経て、2022年より東京大学男女共同参画室特任研究員、2023年より特任助教。過去に厚生労働省「働き方の未来2035懇談会」、経済産業省「競争戦略としてのダイバーシティ経営の在り方に関する検討会」「雇用関係によらない働き方に関する研究会」委員を務めた。著書に『「育休世代」のジレンマ』『なぜ共働きも専業もしんどいのか』『教育大国シンガポール』等。

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