「農家の直売所」が日本の農業を変える仕掛け 農業総合研究所トップにロングインタビュー
及川:本当は自社で全部やりたいのですが、人的リソースも足りませんし、それだけの人材を抱えるとさまざまな問題も生じます。また、地方では、「農業総合研究所」という名前が知られていないので、なかなか伝わらないんですよね。地元の企業にやってもらったほうが信用度もありますし、展開も速くなります。
村上:地方では御社よりも、ローカル企業のほうが知名度・信用度が高いわけですね。
及川:その通りです。さらに、この仕組みが優れている点は、ファーストワンマイルとラストワンマイルを敢えてやらないことにあると考えています。集荷場に農家の方が持ってくる、お客さんがスーパーに買いに来る。その仕組みが構築できている点は強みだと思っています。
村上:アマゾンと違って最後まで運ばなくていいということですね。確かにこの仕組みは秀逸です。
身軽な本業経営×じわじわ提携戦略
村上:他に、御社の提携戦略も興味深いなと思っています。例えばデリカフーズさんとも提携していますが、こういう提携は今後増やしていきますか?
及川:そうですね。我々の経営方針は大きく分けて二つあります。一つは持たない経営です。農業を変えるITベンチャーと名乗っていますが、スタッフ150人のうちITができるのは2人なんですよ。まさかのIT外注ベンチャーなんですよ。
村上:それはすごいですね。
及川:先ほど物流プラットフォームについてお話ししましたが、72拠点の倉庫は全部借り物ですし、物流は全部アウトソーシングなんですね。
村上:アセットライトですね。
及川:そうです。だからこそ、提携をしていかなければいけないということですね。もう1つ大切にしているのは隣のビジネスはやらないということです。よく隣の領域への染み出しはシナジーを生む、というのですが、やってみると難しさに気づくことも多いと考えています。
我々の場合は、主要事業の隣にあるものは何かというと、生産と小売りです。この、すぐ隣の領域には参入しません。ですが、そのさらにお隣の、種屋さん、苗屋さん、肥料屋さん、農薬屋さんに関しては、チャレンジしていこうと。
村上:なるほど。JAと同じ発想ですね。
及川:仰るとおりです。生産者が増えているので、彼らにいわば「原料」を提供することができるのではないかと思っています。スーパーはすぐ隣の領域なのでやりませんが、外食やBtoCは隣の隣なので、可能性あり、という発想ですね。