「農家の直売所」が日本の農業を変える仕掛け 農業総合研究所トップにロングインタビュー

ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

及川:今地銀が国から何を言われているかというと、「地方創生しなさい、地方を活性化しなさい」ということです。そして、「地元を活性化する」といった時には地元のビジネスってだいたいが農業なんですよ。しかし、地銀としては普段から農家と取引しているわけではないので農業のことはあまりわからないわけですね。だったらそこに我々が入りますよ、と。我々と組んで、地元の農業を活性化させていきましょう、ということです。

我々が得たいのは、地元の農業の情報です。他には、集荷場運営の委託先になりうる会社だったり、販売先になりうる地元のスーパーだったりを地銀に紹介して欲しいわけです。では、我々は地銀に何が提供出来るかというと、都会のスーパーで継続的に農産物を売るための販路を生産者に提供する、ということです。この販路を武器として、是非とも生産者に営業に行って下さいと言っています。

地銀の名前を出しただけでは農家さんには話を聞いてもらえないかもしれないけど、「東京のスーパーで売ってみませんか?」というと非常に入りやすいわけですよね。そこで地銀と我々と生産者のネットワークができれば、追々、生産者の決済代行を地銀にやってもらったり、地元の生産者に対してうちを介して金融商品を紹介したりするという世界もあり得るかなと思っています。

村上:なるほど。新規参入する生産者にとっては最初の設備投資負担が大きいというような話もありますから、地銀にとって、投資の余地はありますよね。御社と組めば販売網開拓の話とセットで投資の話を持ち掛けられるわけですから、投資の可能性も広がるという期待感もあるわけですね。

及川:その通りです。今まではJAがやってきたことではありますが。

村上:確かにそうですね。そういう意味ではまさに、広い意味でのJAに代わる選択肢になれる可能性がある、ということですね。今の生産者の不満―中抜きに対する不満や、消費者と直接つながれないといった不満―を解消しながら、販売網の出口として、スーパーに直接販売できるだけでなく、BtoCもBtoBも海外販路も選べるようにしていく。こうして生産者と消費者を直接繋ぐプラットフォームとして完成していき、生産者も消費者もハッピーになる世界に近づいているということですね。

改めて非常に面白い戦略だと思いますし、順風満帆でいらっしゃるように思うのですが、今の戦略を進めていく中で、課題もあるのでしょうか?競争環境に目を移すと、やはり隣にはJAという屈強なプレイヤーがいるわけですが。

JAと共存共栄で生産者の選択肢を増やす

及川:そうですね。我々はJAの競合という見方をよくされます。でも、我々は72の提携集荷場を持っていますが、そのうち二カ所はJAが運営しているんですよ。その集荷場に生産物を持って行くと、JAにもうちにも出荷できるようになっています。そして、うちに出荷するとなった場合にはうちからJAに手数料をお支払いしています。

このように、もしかしたら、JAのものも我々を介して売るということが出来るかもしれないので、JAと我々とで、共存共栄で生産者の選択肢を増やしていくことが出来るんじゃないかと考えています。

次ページJAは競争相手ではない
関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事