「農家の直売所」が日本の農業を変える仕掛け 農業総合研究所トップにロングインタビュー
村上:JAは競争相手ではないわけですね。
及川:はい。外的環境におけるリスク、という意味では、一番のリスクは予想外の気候変動です。一番怖いのは天気ですよ(笑)。
生産者の経営力底上げを図る
村上:御社は生産者の選択肢を増やすという意味では、生産者を囲い込むという思想はないわけですね。押さえたいのは物流と、出口としての決済ということでしょうか?
及川:そうですね。決済はすごく難しくて、今までの農業の決済の在り方がかなり特殊なんですよ。まず1万円分出荷したら3日後に現金が入ってくるというような仕組みで、一方、JAに出したら遅いところでは売掛回収は半年後……なんていうこともあります。
我々は農業をビジネスとして確立したいと考えているので、月末締め月末払いにしたいわけです。支払いサイト・回収サイトを安定させ、そこを基盤に農家が安心してビジネスを構築できる仕組みを提供したいと考えています。今は決済を手がけた際に、ぼくらどうやってお金をいただくのかを考えているところです。
農業をやられている方が、経営者として必要な情報をちゃんと得られるような仕組みにしたいので、できれば会計ソフトもつけてリリースしたいところですね。
村上:なるほど。会計ソフトですか。そうすると、ある程度、生産者の決済データを確保していって、データを活かすということも出来そうですね。
及川:そうですね。我々のプラットフォームでは、売上に留まらず、スーパーの定量的な情報がすべてわかるようになっています。
そこに軽いフィンテックのようなものを入れていきたいなと考えています。将来的には、例えばですが、後継者の息子が50歳になって実家である農家に帰ってくるとします。その息子に対して、年収700万を提供したいとします。そこで我々のデータベースを介して、「年収700万を目指すなら、今から事業の規模を拡大していかないとそこまで届きませんよ」、というようなサジェストができるようになっている、といった世界にしたいなと。
当然、販売データだけではなく生産データも蓄積しますから、データとして後継者に経営ノウハウも提供できます。そういう仕組みにしていきたいと思っています。
村上:かなりリアリティのある未来像ですね。現在でもすでに、どういうものが売れているかという売買・流通のデータはどんどん貯まっていっているわけですよね。例えば、「売れるのはこういうレタスだ」というような、生産者にとってメリットになるような情報が御社に蓄積されていくわけですね。
及川:はい、その通りです。