「農家の直売所」が日本の農業を変える仕掛け 農業総合研究所トップにロングインタビュー

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村上:登録されている生産者からはどんな声が挙がっていますか? 実際に消費者の「ありがとう」は届いたのでしょうか?

及川:そうですね。まず、他の流通よりも、「ありがとう」が届く仕組みは作れたと思っています。これまでは、そういう声を伝えるにしても、アナログな手段が多かったんですよ。スーパーで買ってくれた人が、「この生産者の野菜をいつも食べているんだよ」、みたいなことを言ってくれた時に、販売者がそれをメモにとって生産者に伝える、というようなやり方ですね。ですが、今はITを通じて届くようになっています。

どこかで聞いたような言葉ですが「美味しいいね」というボタンがあって、ワンタッチで生産者に伝えられるようになっています。

逆に生産者からも、今作っているものがいつ近くのスーパーに届くのかという情報を消費者に伝えることが出来ます。「トマトを植えました。赤くなりましたよ。いついつに出荷しますよ」というようなプロセスを生産の現場から直接伝えられるような仕組みもこれから作っていきたいと思っています。

加工・流通・販売をワンストップで実現する構想

村上:前回、御社のビジネスモデルについて伺いましたが、御社の登録生産者が享受するメリットは3つあると思います。食べている人の顔を見ることが出来るという喜び、流通の選択肢が増える利便性、そして収入が増えることです。ただ、生産者が御社のシステムへの参画を検討する際には、短期的なメリットがあるかどうかが効いてくるのかなとも思います。この3つの中で、どの部分が短期的なメリットに感じられるものでしょうか。

及川:短期的には、お金が稼げるというのが一番です。今までは市場だったので競りで値段が決まっていましたが、我々のやり方では生産者が値段を決めるので、頑張って高く値をつけようと思えばつくようになっています。

(画像:農業総合研究所「成長可能性に関する説明資料」より)

村上:なるほど。生産者からすると、流通させる手段として、市場に出したり、道の駅や直売所に出したりという選択肢もある中で、実際にどの程度、御社の仕組みに登録する生産者がいるのでしょうか?または販売者からの引き合いもあるものなのでしょうか?

及川:ありがたいことに、どちらも営業をしないで口コミで入ってきて頂ける状態です。昨年だけで取り扱って頂けるスーパーは300店舗ほど増えていますし、生産者も1000名ほど増えています。我々は正直言って、一切の営業を行っていませんし、このモデルは営業をしたからといって参画してもらえるようなものでもないのです。登録生産者を増やすためには、生産者が自分から出荷したいと思ってもらえるような仕組みを提供する必要があります。

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