「選手の話が事実」とは言わない日大の冷酷さ この会見で大塚学長は何をしたかったのか

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22日の、少し前まで未成年だったスポーツ選手が母校でなく記者クラブで行った、弁護士の立会いが許されたとはいえ「1人での記者会見」は、その内容とともに本当に胸の痛む映像でした。

メンバーから外されるなどの心理的プレッシャーから始まる危険タックルに至るまでの経過説明に監督等をなじる言葉はなく、責任はあくまで自分にあるが、コトの真相を明らかにすることが真の謝罪だという、彼の真意が終始にじみ出る潔いものでした。

あえて顔と実名を出したことの重い意味

まず私は会見で、選手の顔がアップで映されたこと、さらに実名で登場したことに驚きました。このネット時代に、このような問題でいくら誠実に謝罪しようと、顔を出すこと、あえて実名を出すことはどのような不利益を被るか予測できません。

大きなリスクがあるにもかかわらず、「顔を出さない謝罪はない」という本人の決意からだと聞きました。言葉は、その発せられる内容だけでなく、話し手の表情、特に目の動きが多くを語るものです。あのような緊張した場で、多弁ではないがよどみなく話す彼の言葉や姿に、一点の曇りもないことは明らかでした。

よくイジメなどで追い詰められた人は、正常な判断ができず、その世界以外に生きる道はないと思い込み、"とんでもない行動"に出ることがあります。私は彼の会見中、よくぞそこで踏み止まってくれたと(被害選手には申し訳ない感想ですが)、彼に敬意を覚え、感謝していました。

理不尽に、決まっていた日本代表選手のメンバーを辞退するよう指示されても、練習に参加させてもらえなくともその理由すら聞けず、「はい」としか答えられない絶対権力者を相手に、彼は勇気を出しました。彼が“とんでもない行動”に出たか、前監督等がいう「彼の優しさ」で泣き寝入りしていたら、第2・第3のこうした選手や被害選手が出ていたことは、疑う余地もありません。

しかも加害選手とその父親は、関学大の被害学生やその関係者への謝罪を「事件」の5日後に申し出たところ監督に止められていたそうで、それを押しての選手の1人会見でした。その真摯な会見を受けての指導者の会見の内容は1つしか考えられず、聞く必要も感じませんでしたが、確認のために私はじっくり聞きました。

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