未来のコインランドリーが「無料」になる必然 「WASHハウス」社長にロングインタビュー
児玉:その点、コインランドリー事業は、世界で約20万店舗、約3兆円の市場規模(WASHハウス推定)でありながら、日本には上場しているコインランドリー事業者が1社もない状況でした。誰もこのマーケットの大きさに気付いていなかったのです。
また、私はかつて証券業界で営業として働いており、毎月売上がゼロにリセットされる世界にいました。そうした経験もあり、何とかストック型のビジネスにしたいという思いがありました。事業の核があり、ネットワーク化していくことで、付帯収益を生み出し、ある時一気に事業を拡大できる仕掛けです。加えて、最低でも1兆円以上の市場があるものをやりたいと思っていました。上場を目指すにはそのくらいの規模感が必要だからです。
その結果が、コインランドリー事業です。世界中を調べた時、コインランドリーは約20万店舗もありました。約3兆円の市場です(WASHハウス推定)。日本では、誰も気づいていなかったわけです。コインランドリー業界には上場企業が1社もありませんからね。
朝倉:言われてみると確かに、コインランドリー大手、という会社は世の中にありませんね。
児玉:可能性を強く感じました。たとえばアメリカには、7000億くらいの市場があります。日本の5~7倍くらいの規模ですね。ニューヨークには、1店舗に洗濯機・乾燥機が120台もある大規模なコインランドリー店もあるのです。日本には、そんな店舗を展開しているプレイヤーは、誰もいませんよね。
そもそも洗濯という業態は、社会的地位が低いと見られがちな傾向にあります。歴史的には、多くの国で、移民が、資本がない中、手作業で洗濯をして日銭を稼ぐところから発生した職業です。その中からある程度資本を蓄えた事業主が登場し、洗濯機を置いて貸しだすようになったのがコインランドリーの始まりです。
これが世界中に広まって、日本に入ってきたのは1970年代です。
朝倉:少し驚きましたが、70年代まで日本にはなかったんですね。
児玉:実はありませんでした。今でも監督官庁がないため、コインランドリーが全国に何店舗あるのか正確な数字は誰にもわからない状態です。
小林: 業界団体のようなものはないわけですね
児玉:洗濯機を売るメーカーやその販売業者の団体はありますが、コインランドリーについてはありません。
コインランドリーはこういった環境の中で増加していきました。つまり、遊休地、たとえばビルの1Fのテナントが空いていたりした場合に、洗濯機の販売業者がビルのオーナーに洗濯機を売り込みに行くといった発想で広がっていったんです。
ビルの経営は家族経営であることが多いため、結果としてコインランドリーも家族経営的な店舗が多く存在しています。こういった背景があるため、法人が運営して、大規模にチェーンを展開するという現象に発展しづらいわけです。だから先行事業者が存在しないままになっていた。ここに目をつけました。
大規模な全国チェーンがないので、たとえば、テレビコマーシャルもなかったわけです。
人口が減少してもコインランドリーは伸びる
朝倉:なるほど。業界が成立するプロセスで大手プレイヤーが生まれにくい環境にあったわけですね。少子高齢化に対応できるかという観点についても教えていただけますか?
児玉:少子高齢化に関して言うと、ポイントになるのはアレルギーの増加の問題です。現代では、3人に2人がアレルギーを持って生まれてくるというデータもあるくらいで、小学生のアレルギー疾患者も増加しています。子供は減りますが、アレルギーを持って生まれてくる子供は増えている。洗濯ニーズが増える萌芽がここに見て取れます。特に、布団などの大物洗濯ですね。