未来のコインランドリーが「無料」になる必然 「WASHハウス」社長にロングインタビュー
児玉:我々は、すべての店舗で、近所に住んでいる主婦をはじめとしたパートスタッフを2人程度採用し、5時~22時のうち、好きな時間を選んで、1時間だけ店舗で勤務してもらうというオペレーションを敷いています。この勤務形態を実現しようとすると、労務管理と業務報告が問題になるわけですが、この来店客向けのタッチパネルを従業員向けにも使えるようにすることでその問題をクリアしました。スタッフはお店に行き、タイムカードを押す代わりにこの端末にログインすればいいわけです。他にも、従業員への情報伝達ツールとしても機能しており、たとえば翌日からセールを出す店舗では、セール用のポップを出すという指示がタッチパネル上に表示されるといった使い方をしています。
小林:この管理システムは自社で開発されたのですか?
児玉:いえ、自社開発ではなく地元の開発会社に依頼しました。無人の店舗ながらも、有人の店舗と同様のサービスレベルで対応するという発想の下、こういったシステムを開発しています。
合わせて、本社にはインハウスでコールセンターも抱えています。365日24時間、店舗でトラブルがあれば遠隔で即時に対応できる体制を取っているのです。
朝倉祐介(シニフィアン共同代表。以下、朝倉):コールセンター業務はアウトソーシングの対象となりやすい業務ですが、御社の場合はサービスのコアとなる機能として重視されているということでしょうか?
児玉:その通りです。我々は、遠隔操作が可能なシステム・オペレーションとリアルな店舗を結び付けることで、顧客によりよいサービスを提供する会社だと自負しています。したがって、コールセンター業務はエンドユーザーへのサービスレベルを決めるコアとなる業務だととらえています。
家族経営ビジネスを仕組み化で変革
朝倉:御社がコインランドリー事業に目をつけられ、このビジネスに伸びしろを見出した着想についてはよく理解できました。他に、このビジネスに参入する際に検討された観点はどんなものがあったのでしょうか。
児玉:大きくは先行事業者がいないかということと、少子高齢化に対応できるかということを考えていましたね。
先行事業者がいるかどうかという観点については、地元の不動産会社に務めていた時の出来事が原体験になっています。当時、その不動産会社で別会社を作らせてもらい、賃貸手数料の無料を軸にした会社を立ち上げたことがあります。全国で初めてのケースで、日経新聞にも取り上げてもらいました。しかし、同業他社からものすごく批判されました。先行事業者の反発にあってしまったわけですね。結局、私が狙ったスタイルは、実現出来ませんでした。先行事業者がいる世界は何かと業界的な制約が多く、自由にビジネスが展開しにくいということを痛感したのです。