未来のコインランドリーが「無料」になる必然 「WASHハウス」社長にロングインタビュー
児玉:購入して一カ月しか経過していない布団でも約30万匹のダニが発生すると言われています。これを、綺麗にするためには、クリーニングに出すか、コインランドリーで洗うのが一番なのだそうです。クリーニングに出すと1枚3000円ちかくかかるところを、コインランドリーなら1000円で3枚洗えます。
小林:そうなんですか。それを伺うと、さっそく家の布団をコインランドリーで洗いたくなりますね(笑)。
布団専用掃除機のブームからもわかる需要
児玉:ですよね(笑)布団専用掃除機がブームになったことからもわかるように、アレルギーに悩む人が増えるなか、日本中が布団の洗濯を求めているのは明らかです。でも、近所にコインランドリーがないから、洗えない。これが我々のビジネスチャンスです。
朝倉:コインランドリーは、単身者や学生、自宅に洗濯機のない人が利用するサービスという印象があるのですが、これからはファミリーや中間層以上も使うようになっていくということでしょうか?
児玉:既にそうなっています。今でも中間層以上が使っています。ただ、東京ではまだそうなっていなですね。九州での利用率は40%強に達していますが、東京では、8~10%しかないからです。どうしてこれほど差が出るのかというと、九州では布団をコインランドリーで洗うという文化が根付きつつあるからです。東京もいずれそうなるはずです。
我々は九州から事業を始めましたが、東京の人たちも洗えたら洗いたいわけですよ。でも、家の近所にコインランドリーがありません。なので、コインランドリーを増やせばいいのですが、駐車場があるお店は都心には作りづらいです。そこで、新宿に30坪の駐車場がないお店を出しました。実はかなりの売上があがっています。都心では、これを参考に郊外型の店舗とは異なる都市型出店の戦略を考えています。
小林:うちは猫を飼っているので、近くにあったら間違いなく使います(笑)。洗濯機の性能は、家庭用のものとどの程度異なるのでしょうか。
児玉:布団を洗おうと思った場合、価格にすると200~300万円、重さにすると1トンもの洗濯機が必要になります。なので、家庭で使うことはまずありえません。いずれにせよ、今後、日本の人口は減少しますが、アレルギー対策の市場は拡大すると確信しています。
村上誠典(シニフィアン共同代表。以下、村上):非常に面白いですね。普通、人口減少を見据えてビジネスモデルを考えた場合には、増加する高齢者や、観光客といった新しいマーケットにフォーカスすることが多いように思います。御社の場合、既存マーケットでありながら利用率が向上して成長することを目指していらっしゃるわけですね。
児玉:そうですね。さらに、コインランドリー事業は、ビジネスモデルとしても優れています。飲食業の経営のような仕入れもほとんどなく、人件費もかからず、ロスも出ない。場所さえ確保できてしまえば使った分だけ公共料金を払えばいいというモデルなんです。だからこそ、これまで利用率が低くてもビジネスとして成立してきてしまったわけですね。
私の分析上では、機器等の償却さえ終わっていれば、1日あたり3人のお客様が来店してくれれば、収支が合うと考えています。使う人が増えれば、当然コストは増えますが、価格設定を間違えなければ、決してお店は潰れません。