パナ伝説のエンジニアが語るイノベーター論 特許件数1300件、ライセンス収入は380億円
登録特許数1300件!
石川:本日は、「世界の大嶋さん」をご紹介できて大変光栄です。
大嶋:いえいえ、よろしくお願いします。
石川:読者のために、まずは大嶋さんのご経歴をざっとおさらいしたいと思います。まず、大嶋さんが出願した登録特許の数は1300件! その特許ライセンス収入だけで、これまでパナソニックに380億円をもたらしています。さらに、大嶋さんの研究が元となったプロダクトによる営業利益は3000億円! 仮に営業利益が5%だとして計算すると、6兆円を売り上げたことに相当します。
では実際、大嶋さんは何を発明されたのかというと……代表的なのが「振動ジャイロ」で、この技術からビデオカメラやデジカメの「手ぶれ補正」技術が生まれています。これだけでも世の中に大きな恩恵をもたらしたと言えますが、さらにさらに、海外大手半導体メーカー製CPUに採用されている「省電力CPU」、日米欧の地上波デジタルTV放送の基幹部を担う「規格必須特許」、コピー・ワンスやダビング10といった“光ディスクへのコピー”を実現させた「光ディスク規格(BCA CPRM)」、同じく光ディスクソフトの「ゲーム用光ディスク技術」、3D放送に不可欠な「3D符号化技術」、そして最近では「光ID技術(リンクレイ)」といった技術を発明していらっしゃいます。
つまり大嶋さんは、世界初や世界一の発明を次々に生み出す、シリアル・イノベーターと言うことができるでしょう。実際、シリアル・イノベーターの研究をしているイリノイ大学のブルース・ボジャック教授たちがまとめた『シリアル・イノベーター 非シリコンバレー型イノベーションの流儀』(プレジデント社)という書籍のなかでも、大嶋さんは紹介されています。
石川:クリエイティビティやイノベーションの研究は、1960年代にJ.ギルフォードというアメリカの心理学者が始めて以来、半世紀近くに及ぶ知見がたまっているわけですが、今日までに、2つのことが明らかになっています。
その前に大前提として、イノベーションやノーベル賞を取るような発見は「運である場合が多い」という事実をお伝えしておきましょう(笑)。たまたま巡り会っちゃった、というケースが意外と多いんですよ。
とはいえ、ディスラプティブ(=破壊的)なことをする人というのは「どうもこういう人なんじゃないか」という特徴が2つあって、そのひとつが「少人数のチームでやる」ということなんです。多くても3人。それくらいのチームの方が、革命的なことをしやすいと言われています。
そしてもうひとつが、「どこから考え始めるのか」ということなんです。ほとんどの人は、「新しくて人気があるアイデア」に飛びつきます。いまだとブロックチェーンとかAIとか。そうした新しくて人気がある分野から考え始める人は、「ものごとを成長させる」ときにはいいのですが、「ディスラプティブ」なことはしない、というわけです。耳の痛い人もいるのではないでしょうか?