「特別支援学級」で育った子の知られざる本音 5歳で発達障害の診断を受けた女性の今

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でも改めて考えてみると、それは発達障害だけの話ではないかもしれません。日本の学校教育全般、「周囲や社会に合わせること」ばかりを求めてきました。そのため、さんざん指摘されてきたとおり、「自分で考える力が育たない」という問題が起きています。

わたしがよく取材するPTAの問題も同根です。これだけ多くの人々から不満の声があがるのは、仕組みに問題があるからですが、「仕組みを見直そう」という人がたまに現れると、「厄介モノ」扱いされてきました。

これもまさに「周囲や社会に合わせること」ばかりを求めてきた学校教育の成果のようにも思えます。

「発達障害だから」に潜む危険も

「発達障害」という診断がつくことで、本人の言うことが信用されなくなってしまう場合もあるのでは? 涼音さんは、そんな可能性も心配しています。

「たとえば私が親に『勉強がしたい』って言っても、私には『発達障害』という枠が与えられているから、『あなたには無理』と言われて終わりなんですよ。だから、もし『お前は発達障害だから、状況把握ができなくて虚言癖がある』みたいなことを親が言っちゃえば、本人の意思にかかわらず、それが通っちゃうこともあり得る。

たぶん、虐待を受けている子どものなかにも、発達障害という診断を受けているから『本人の虚言』で済まされている人はいると思いますよ。私は虐待を受けていないですけれど、私のまわりには、『生きててごめんなさい』って親に土下座させられた子とか、ふつうにいたので」

社会や周囲に合わせることも、もちろん必要です。でも、それが度を過ぎれば、子どもの人権を踏みにじることにもつながりかねない。よく考えなければいけない、おそろしい点です。

涼音さんは、この春から1年間、大学を休学することに決めています。

「4月から、なんか勉強します。やっぱり勉強していない、というのがすごいアレなので。昔から、塾に通ってたらどうだったんだろう? とか、ピアノを習ってたらどうだったんだろう? とかすごく考えるので、1回やってみようかなって。休学するだけで、もちろん大学は卒業しますけど。

苦労ばっかりして、やりたいことをやってきていないなって思うので、プラスの経験値を上げたいんです。去年は養父との縁組解消や、引っ越し、大学の入学手続き、成人に伴う国民年金・障害年金の手続き、遺産相続などがいっぺんに来て、さらにバイトや学校もあって、けっこう辛かったです。休学中の在籍費は、バイト代からもう母親に渡してあります。話したら許してくれました」

「自分の認識を信じること」を課題とする涼音さんが、ようやく自分で下した決断です。どうかこの1年が、涼音さんにとって必要なものを得られる時間になるよう、祈ります。

 

本連載では、いろいろな環境で育った子どもの立場の方のお話をお待ちしております。詳細は個別に取材させていただきますので、こちらのフォームよりご連絡ください。
大塚 玲子 ノンフィクションライター

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おおつか れいこ / Reiko Otsuka

主なテーマは「いろんな形の家族」と「PTA(学校と保護者)」。著書は当連載「おとなたちには、わからない。」を元にまとめた『ルポ 定形外家族』(SB新書)のほか、『PTAでもPTAでなくてもいいんだけど、保護者と学校がこれから何をしたらいいか考えた』(教育開発研究所)『さよなら、理不尽PTA!』(辰巳出版)『オトナ婚です、わたしたち』(太郎次郎社エディタス)『PTAをけっこうラクにたのしくする本』(同)など。テレビ、ラジオ出演、講演多数。HP

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