でも改めて考えてみると、それは発達障害だけの話ではないかもしれません。日本の学校教育全般、「周囲や社会に合わせること」ばかりを求めてきました。そのため、さんざん指摘されてきたとおり、「自分で考える力が育たない」という問題が起きています。
わたしがよく取材するPTAの問題も同根です。これだけ多くの人々から不満の声があがるのは、仕組みに問題があるからですが、「仕組みを見直そう」という人がたまに現れると、「厄介モノ」扱いされてきました。
これもまさに「周囲や社会に合わせること」ばかりを求めてきた学校教育の成果のようにも思えます。
「発達障害だから」に潜む危険も
「発達障害」という診断がつくことで、本人の言うことが信用されなくなってしまう場合もあるのでは? 涼音さんは、そんな可能性も心配しています。
「たとえば私が親に『勉強がしたい』って言っても、私には『発達障害』という枠が与えられているから、『あなたには無理』と言われて終わりなんですよ。だから、もし『お前は発達障害だから、状況把握ができなくて虚言癖がある』みたいなことを親が言っちゃえば、本人の意思にかかわらず、それが通っちゃうこともあり得る。
たぶん、虐待を受けている子どものなかにも、発達障害という診断を受けているから『本人の虚言』で済まされている人はいると思いますよ。私は虐待を受けていないですけれど、私のまわりには、『生きててごめんなさい』って親に土下座させられた子とか、ふつうにいたので」
社会や周囲に合わせることも、もちろん必要です。でも、それが度を過ぎれば、子どもの人権を踏みにじることにもつながりかねない。よく考えなければいけない、おそろしい点です。
涼音さんは、この春から1年間、大学を休学することに決めています。
「4月から、なんか勉強します。やっぱり勉強していない、というのがすごいアレなので。昔から、塾に通ってたらどうだったんだろう? とか、ピアノを習ってたらどうだったんだろう? とかすごく考えるので、1回やってみようかなって。休学するだけで、もちろん大学は卒業しますけど。
苦労ばっかりして、やりたいことをやってきていないなって思うので、プラスの経験値を上げたいんです。去年は養父との縁組解消や、引っ越し、大学の入学手続き、成人に伴う国民年金・障害年金の手続き、遺産相続などがいっぺんに来て、さらにバイトや学校もあって、けっこう辛かったです。休学中の在籍費は、バイト代からもう母親に渡してあります。話したら許してくれました」
「自分の認識を信じること」を課題とする涼音さんが、ようやく自分で下した決断です。どうかこの1年が、涼音さんにとって必要なものを得られる時間になるよう、祈ります。
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