「特別支援学級」で育った子の知られざる本音

5歳で発達障害の診断を受けた女性の今

なお中学校では、小学校まで普通学級にいた子どもたちが特別支援学級に入ってきたため、知的障害が軽度の子の割合が増えたといいます。

「そういう軽度の子は、(普通学級での)いじめられっ子から急に(支援級での)優等生になって、自分より障害が重い子をいじめちゃう、ということもありました。軽度というか、境界に近づくほど知恵がついて、人に意地悪をすることも考えるようになるので。

知的障害が軽い子は、自分より重い子のことを手伝って、全部やってあげちゃったりして。そういう差も感じていました。頃合いを見て『本人にできることは、本人にさせたほうがいいよ』と言えば、直る子は直るし、ふてくされる子はふてくされるし」

涼音さんの目線はもはや、先生のそれですが、もしかすると本当は普通学級でも、子ども同士の間でこういったサポートがあってもいいのかもしれません。

周囲に合わせる、の次の段階

大学生となり、20歳を迎えた涼音さん。いまの課題は、「自分の認識をいかに信じるか」ということだそう。

「これまではずっと、自分が周囲に理解されるように変わるしかないと思って、社会に合わせて生きてきました。たとえば、『こういうことをすると人を怒らせてしまうから、してはいけないよ』とか、そういうレベルです。

だから、いざ自分が『どうしたい?』って聞かれると答えられない。ほかの人からは、私は気ままに生きているように見えるかもしれないけれど、実際はあんまり好き勝手には生きていないので。

たとえば、ひどいことを言われたときに、怒るべきか泣くべきかわからないんです。自分が知らないうちに、相手を傷つけることを言っちゃったのかな? とか思っちゃう。まわりに合わせてばっかりだから、自分の認識に自信がもてない。

いまは、自分の認識をいかに信じるか、それをいかに伝えるか、という段階です。『自分は何ができなくて、どこが間違ってる』じゃなくて、『周りのどこがダメで間違ってる』と言うこと。相手がおかしいことを言ったときに、『あなたはこういう点がおかしい』と、いかに言うか。そういうことが必要な段階に入ってきちゃったことが、私は苦しいですね」

考えたことがありませんでしたが、それは大変なことでしょう。いまの日本では、発達障害の人たちは「周囲や社会に合わせること」を求められ、そのための教育を受けていますが、実社会に出るにあたっては「自分がどうしたいか」を求められます。戸惑うのは、無理もないことです。

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