パワハラ上司に悩む女性を救った2つの言葉 被害から抜け出す近道は仲間を見つけること

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フリーランスの場合の手順は「パワハラの内容を記録する」や「被害者同士で連帯する」から始め、最終的には以下の項目をもとに発注主との仕事を判断したほうがいい。いずれの項目にも「YES」と答えられるのであれば、その発注主との縁を切ってしまおう。ただし、未回収の報酬だけはすべて回収しておくように。

【1】その発注主と切れても生活は困らないか?
発注主を切ったことで、生活が成立しなくなったら元も子もないため。
【2】その発注主に圧倒的に非があることを周囲は理解してくれるか?
周囲も理解してくれるようであれば、同情心から新しい仕事を融通してくれる可能性もあるため。
【3】ほかに自分を評価してくれる発注主が3人以上いるか?
3人以上いるなら、そうじゃない発注主を1人切ってもカバーできるため。
【4】その発注主から注文される仕事は正直あまりやりたくないか?
「発注額が高額」「実績に繋がる」など依頼のメリットが大きければ、一旦我慢して付き合うのも手。
【5】その発注主と縁を切ったことが周囲にバレたとしても自分の正当性を証明できるか?
もし自分にも落ち度がわずかでもあるようだったら、慎重に動くこと。いきなり縁を切ってしまうと、業界内で悪評が立つリスクがある。

パワハラの責任は加害者にある

私はパワハラ被害者だけじゃなく、彼らの苦痛の種である「加害者」と話すことも多い。パワハラに加担した事実について彼らにどう思うかを尋ねると、不思議なことにいつも判で押したように決まった反応が返ってくる。

「そんなに大変なんだったら言ってくれればよかったのに……」ないしは「いやぁ、まさかそんなことを(被害者が)思っているとは夢にも思っていなかった。オレは仕事をよりよくしたいと思っていただけなんだけどね……」だ。

前者の加害者はパワハラをしていた意識は一切なく、仕事全般が苦しかったのが被害者の苦痛の原因だと解釈している。いやいや、被害者の苦痛の原因は「お前」にあったんだよと言いたい。被害者が何も言わなかったのは、最後の温情か、あるいは恐怖心のためである。もし自分がやめたあとに他の人ヘのパワハラの延焼を防ぎたい場合は、キチンと「私がやめる原因はあなたにある」と突き付けたほうがいい。

後者の加害者については、若干同情の余地はある。彼のように仕事に誠実すぎるがゆえに態度がキツくなってしまった場合、数年後に再会した際に「あのときはごめんな」と謝罪されることも案外あるからである。

そして、最後に重要なことを伝えておきたい。「パワハラを受けたとしても、自分を責めたり卑下したりしなくてもいい」ということだ。

パワハラのダメージは小さくない。人によっては加害者から離れた後も心の負担を感じたり、行動の足かせになったりもする。しかし、これまで説明してきたようにパワハラ加害者は非合理的かつ自分勝手な場合が往々にしてある。

「あんなに上司から責められた自分はずっとダメな人間なんだ……」と考えてしまう人がいたら、「そんなことはない」と言いたい。転職や人間関係を整理したことで人生が上向いたケースを、私はこれまで多く見てきた。「消極的な転職や退職は逃げているのと同じ」という意見も時に見かけるが、理不尽な状況に苦しむぐらいであれば、積極的に逃げて新しい可能性を掴んだほうが得策ではないだろうか。

中川 淳一郎 著述家、コメンテーター

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なかがわ じゅんいちろう / Junichiro Nakagawa

1973年東京都生まれ。1997年一橋大学商学部卒業後、博報堂入社。博報堂ではCC局(現PR戦略局)に配属され、企業のPR業務に携わる。2001年に退社後、雑誌ライターや『テレビブロス』編集者などを経て、出版社系ネットニュースサイトの先鞭となった『NEWSポストセブン』の立ち上げから編集者として関わり、並行してPRプランナーとしても活動。2020年8月31日に「セミリタイア」を宣言し、ネットニュース編集およびPRプランニングの第一線から退く。同年11月1日、佐賀県唐津市へ移住。ABEMAのニュースチャンネル『ABEMA Prime』にコメンテーターとして出演中。週刊新潮「この連載はミスリードです」他連載多数。

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